成年後見制度は本人の保護には強いが「自己実現」には弱い部分がある?

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※この記事は知的障害等をお持ちの方のご家族の視点で書かれています。

成年後見制度は本人の保護という面では優れているが、本人の自己実現の達成には弱い面がある

成年後見制度は、意思能力や判断能力が無い方の保護を図るための制度です。

大変画期的であり、優れた制度ではあるのですが、それは「本人保護」という面で活用する場合です。

反面、「本人の自己実現」という点については思わぬ障害となる場合もありますので、制度を活用しようとしている方は注意が必要です。

今回は、この「本人の自己実現」に思わぬ影響を及ぼしてしまう場面を想定してみたので検討してみましょう。

本人の自己実現の障害

成年後見制度は本人保護を第一に考えた制度であること

成年後見制度は、本人保護を第一に考えられた制度です。

逆に言えば、本人保護しか考えられていない、本人以外のことは全く考えられていない制度とも言えるでしょう。

当然、本人が第一に保護されるべきであるのですから、そうすると他者のことなど考える必要はありません。

ではその「他者」というのは一体誰を指すのでしょうか。

もちろん、本人に対して詐欺などを働こうとする者も含まれます。そういった者に対しては強力な効果を発揮するのが成年後見制度です。

しかし、「他者」には当然「家族」も含まれます。本人のことを愛してやまない、暖かい家庭を奈落の底へ沈めることもあるのです。

障害者のいる家族の円満な相続

典型的なものが「相続での成年後見制度開始」です。

後悔する家族が後を立たない成年後見制度?

成年後見制度について詳しくない家族が陥るのが「気軽に成年後見制度を開始してしまうこと」です。

「相続で必要だって言われたから…」と他人に言われるがままに成年後見制度を利用してしまうことです。

成年後見人は、一度就任すると原則一生本人を後見します。途中で後見をやめることなど出来ないのです。

成年後見人の就職

本当に成年後見制度が必要であるかよく精査しないまま申し立てを行ってしまい、後々「こんなはずじゃなかった…」と後悔しても後の祭りです。

本当に成年後見人が必要なケースなのか

まず第一に、「障害=成年後見制度」だと思ってしまうこと。この考え方は一般的にも言えることですが、専門家の中にも非常に多いです。

私が「成年後見人をつけなきゃいけないって言われたんだけど…」という相談を受ける中には、「本当に成年後見人が必要なのかな…?」と思ってしまうケースが多くあります。

日常会話ができて、仕事もしている。グループホームなどに入居し、お金の管理も自分である程度出来ている知的障害者や精神障害者の方には、基本的には成年後見制度は不要だと考えています。

「でも相続で必要だから…」と言われることが多いのですが、上記のような方であれば、成年後見人等を立てずに遺産分割協議を行うことが可能だと思います。

遺産分割協議は一種の「契約」です。上記のような方はすでに多くの契約行為を行っています。仕事をするにも「労働契約」が必要ですし、グループホームに入居し、福祉サービスを受けるにも契約行為が欠かせません。

そのような契約を有効に行えているのであれば、そもそも遺産分割協議という契約行為も行えるはずなのです。

しかし、「本人保護」という視点から考えると、成年後見制度を利用するメリットはあります。不利な遺産分割協議書を作られてしまうことの防止になるからです。

成年後見人等をしっかり立てて、本人に確実に財産を残したいといった場合はわざわざ相続のために成年後見制度を利用する価値は十分にあるでしょう。

しかし、そのおそれの無い場合、成年後見制度はデメリットも生み出します。

まずは費用。申し立て時にも数十万円の費用はかかりますが、それよりも怖いのはランニングコストの方です。

毎月2〜3万円を後見人等の報酬として支払わなければならないとすると、10年間でのコストは数百万円にのぼります。

成年後見人にかかる多額の報酬

遺産分割協議のためだけに成年後見制度を利用すると、20年〜30年余分にお金を取られてしまうと考えられなくもありません。

そして、本人の為に家族で考えていた財産に関する計画も予定通り遂行することは難しくなるでしょう。

成年後見人が就いた場合、その後の本人の財産管理は成年後見人が行います。家族は一切手出しが出来なくなるのです。

しかもその財産管理は画一的に行われることが通常です。「本人保護」が第一の制度ですので、本人の財産をできるだけ残すように管理されるからです。

生活のため以外に不動産等の財産を売却することは難しくなりますし、本人のために家族が本人のお金を使うことは許されません。

そして本人に相続人がいなくなった場合、残された財産は最終的に国庫に帰属します。何も対策を取らなければ、残った財産を誰かに受け継がせることも出来ないのです。

本人の自己実現に支障をきたすこともある?

また、本人の自己実現に関わる重要な部分も制限を受けることがあるでしょう。

例えば本人が希望することがあった場合、それが多額の支出を要するものだったらどうでしょう。

家族がやらせてあげたいと希望していたとしても、本人の生活に必ずしも必要ないことであれば、本人の財産から支出することはなかなか難しいでしょう。

本人やその家族が、本人の自己実現のために必要だと思っている事柄でも、自由に出費を行えないという厳しい状況となることも考えられるのです。

障害のある子の自己実現を計画する親

これらのように、成年後見制度は本人保護のためには強力な制度である反面、本人の自己実現に支障をきたすこともある大変難しい制度です。

特に、本人の家族に対しては厳しすぎる制度と言えるでしょう。

そのため、自分達のケースでは本当に成年後見制度が必要なのかをよく考える必要があります。

当事務所では、本当に成年後見制度が必要なのか、他に取る手段がないのかなどをカウンセリング方式でお受けしております。特に遺産分割協議を行うためだけに成年後見制度の利用をお考えの方はぜひ一度ご相談ください。

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