なぜ不動産を共有してはいけないのか?実例を用いて紹介!【親なき後の財産対策】

成年後見人をつけない財産管理

なぜ不動産を共有してはいけないの?最悪な結果となった実例を紹介!

親なきあとの財産対策とは、親の世代が亡くなった時に、子の世代、孫の世代までが困らないような財産の管理、移転を行っていくということです。

障害のある子がいる場合、この親なきあとの財産対策は非常に難解となることが多いです

預金を誰にどの程度渡すのか、不動産はどのように承継すれば良いのか、生前の預金はどのような状態にしておくのが良いのかなど、考えなくてはならないことは多岐にわたります。

その中でも今回は「良かれと思って不動産を共有してしまったことが悲劇を生む」といった事例をご紹介したいと思います。

親が子のために良かれと思って不動産を共有したケース

今回も事例を挙げて説明します(事例を元に細かい点は修正しています)。

(60歳)、(55歳)、長女(20歳)、次女(18歳)の四人家族。次女には重度の知的障害があり、意思の疎通が難しい

父が60歳の若さで亡くなった。父は将来家族が困らないよう、遺言を残していた。

父の預貯金は少額であったが、都内に広めの住宅を持っており、その価値はかなり高いものであった。

父は妻や子ども達が相続で揉めないよう、遺言には「土地と建物については、法定相続分通り、妻二分の一、長女四分の一、次女四分の一で分けること」という旨が書かれてあった。

遺産分割協議が行えない場合は遺言の通りに分けなければ成年後見人が必要になってしまう

次女には重度の知的障害があり、成年後見人をつけなければ遺産分割協議が行えないことを聞いたため、まだ若い次女には成年後見人をつけずに遺言による相続手続きを行った。

土地および建物は、遺言の通り共有名義とする移転登記を行った

5年後、長女が結婚し、家を出た。そして母が持病により次女の介護が負担になってきたことを理由に、次女はグループホームに入所することになった。

母は、自分が亡くなった後に次女に成年後見人をつけずにおけるよう、全財産を長女に渡す旨の遺言を作成した。

さらに5年後、病気により母が亡くなった。

長女は遺言の内容通り、全ての財産を自分に移す手続きを行った。その結果、土地と建物の共有持分については「長女四分の三、次女四分の一」となった

誰も住んでいない家が処分できない!

長女は結婚し、持ち家を購入していたため、誰も住んでいない実家を売却しようとした。

不動産会社に相談すると「長女さんの意向だけでは土地と建物は売れません」と言われてしまった。

次女にも四分の一の持分があるため、共同で売却手続きをしなければならないというのだ

次女は現在グループホームで生活しており、意思の疎通は難しい。字を書くこともできないし、契約に必要な印鑑証明書も取得できない状態である。

長女はとりあえず売却を断念し、高い固定資産税を払い続け、庭の手入れなどの管理も続けることとした。

さらに十年後、老朽化していた実家が地震により修繕が必要となった。

長女は誰も住んでいないのだから修繕は行わないでおこうと思っていたが、見積もり業者からこのままでは倒壊する危険があると言われ、仕方なく修繕を行った。

長女はこれを期に、今まで次女に成年後見人をつけないようにとお金をかけて不動産の管理を続けてきたが、これ以上は破綻してしまう可能性もあると考え、成年後見の申立をし、次女に成年後見人が就くこととなった

被後見人の不動産は簡単には売却できない!

長女は実家には誰も住んでいないことを理由に次女の成年後見人に土地と建物を共同で売却するよう提案した

成年後見人は「次女の持分があるので簡単には売却できない、次女が万が一グループホームを退所することになったら住む場所がない」などと難色を示したが、長女の長きに渡る説得により、家庭裁判所へ許可の申立を行った。

成年後見人が就いてから不動産を売却するまで1年かかったが、何とか不動産を共同で売却することができた。

建物は長年使用しておらず、人が住める状況に無かったため、かなり価値を下げて買い取られてしまった。

またこれまでに誰も住んでいない土地と建物にかけたお金は500万円に上っていた。

不動産を共有しているというだけでこれだけの苦労が…

極端な例を上げましたが、不動産を共有していることにより、八方塞がりになってしまった方からのご相談は多くあります。

このような状態になってしまうと、成年後見人をつけるほか手続きを進めることはできません。

これがもし、父が遺言で次女以外に不動産の持分を渡していたら(次女には不動産の持分を渡さないようにしていたら)このような結果にはなりませんでした

そのため、不動産の共有は(特に障害者のいる家庭では)するべきでないと言われているのです。

そもそも遺言を残していなければ同じ(または近い)結果になってしまいますが、あえて遺言を残したのに、書くべき内容を間違えてしまうとこのようなことになってしまうのです。

「まずは遺言を作るべき、そして遺言の内容を吟味するべき」

障害者のある子がいる親なきあと対策の大きな点の一つは、遺言になります

しかし遺言があるだけでは何の対策にもならないということがお分かりになったと思います。

親なきあとの対策として遺言を作成する場合は、障害者のいる相続に詳しい専門家に依頼すべきだと思います。

当事務所では、障害者のいる相続を専門的に取り扱っておりますので、遺言や相続等でお困りの方はまずはご相談ください。

親なき後の資産計画カウンセリング

当事務所では「親なき後の資産計画カウンセリング」も行っております(有料)。

障害のある子の年齢、将来の予定、家族構成、家族の希望、財産の種類等を元に、資産形成が無駄になることのないようアドバイスを行います。

身近にいるファイナンシャルプランナーや銀行などは「障害者のいる家族」の正しい資産運用にはあまり詳しくないため、教えてもらえる機関を探すのはなかなか大変です。

子が若いうちから間違った資産形成をしてしまうと致命的になります。できるだけ早めに正しい財産の確保を計画しましょう。

※親なき後の資産計画カウンセリングは面談、リモート、メール、お電話にて承りますが、どの方法でも有料とさせていただいております。ご希望の方は、まずはお問い合わせください。

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