精神障害者の相続のポイント4つ!
精神障害者が相続人に含まれる場合、一般的な相続とは注意点が変わってきます。
むしろ一般的な相続の注意点に精神障害者特有の注意点が追加されるといえます。
今回は精神障害者の方が相続人に含まれる場合の相続手続きにはどのような点で注意をしなければいけないかを考えていきたいと思います。
精神障害の症状の波に注意!
知的障害と比較して精神障害にある特徴の一つとして「症状の波」が考えられます。
精神的に不安定な時もあれば、全く精神障害があるように見えない状態でいられる時が長く続くという方もたくさんいらっしゃいます。
そういった症状の方では、相続手続きに必要となる「遺産分割協議が行える時」と「遺産分割協議が行えない時」があるわけです。
さらに「遺産分割協議書を作成できる時とできない時」も生じるため、本人の状態を見ながら相続手続きを進めていく必要があります。
注意点としては、「症状が安定している時には遺産分割協議について納得していたが、症状が強くなった時に納得いかないと言われる」ということです。この点については録画などを行うことで後のトラブルを回避することに繋がります。
施設や病院の入所者は注意
精神障害者の方では施設や病院に入所している方も多くいらっしゃいます。
その場合、遺産分割協議書の作成には注意点が必要です。
先程の「症状の波」の話をしましたが、家族が遺産分割協議書案を作成して本人に署名押印をもらいに行ったとしても、その時に症状が強く出て遺産分割協議の内容を理解できない状態になっていることだってあるのです。
そうなると、厳密に言ってしまえばその時に作られた遺産分割協議書は「無効」となってしまいます。
施設職員等に事前連絡を取って状態を確認する、一時外泊制度などを利用し、落ち着ける自宅などの場所で遺産分割協議を行うなどの工夫が必要となります。
ただし、コロナ禍の影響で面会が禁止されていたり、外泊が禁止されていたりする場合もあるので、その際は施設や病院に事情を説明して理解を得られるようにしましょう。
障害者手帳の有無
一般的に知的障害は「先天的」、精神障害は「後天的」であることが多いです。
そのため、知的障害者の方には無い問題点が発生します。
それは精神障害があるのに「障害年金をもらえない精神障害者がいること」です。
国民年金保険料を支払っていない期間内に精神疾患を患ってしまった場合、その精神疾患が障害年金の受給要件に該当している場合でも障害年金を受給していない者もいます。
ということは、親族などが精神障害があることを知らず、有効に遺産分割協議が行われたと安心したのに、後から精神障害を理由に遺産分割協議の無効を主張される可能性もあるわけです。
逆に銀行等の機関に対しても特に精神障害者が相続人に含まれていることを伝える必要は無いため、銀行から「手帳の交付や年金の受給無し=障害無し」と認識される場合もあります。
相続税の障害者控除の適用について
精神障害がある方が相続人に含まれている場合、相続税額が控除される「障害者控除」の適用を受けることができます。
障害者控除のメリットは
①相続税額から一定額を引くことができる
②障害者本人から引き切れなかった場合は他の相続人も控除を適用できる
③一定額を引いた結果相続税の基礎控除額を下回った場合は相続税の申告義務も無くなる
といった点です。
先程も触れたとおり、精神障害者手帳を持っていなくても医師の診断により精神障害者と認められた場合は障害者控除の適用ができる場合もありますので諦めないようにしましょう。
ただし一番の注意点としては「精神障害者の相続分が0の場合には障害者控除が使えない」ということです。この点については下記の記事を参照して遺産分割協議書の内容を検討してください。
精神障害者の相続は考えなければいけないことがたくさんある!
以上、精神障害者の方が相続人に含まれる場合の相続についてのポイントを説明させていただきました。
一般的な相続と違い、精神障害者の相続は考えなければいけないことや心配となることが多くあるため、御本人を含めたご家族は大変な思いをしてしまいます。
一番安全なのは他の家族が遺言書を作ることです。遺言書を残すことで意思能力のない者が相続人に含まれている場合でも成年後見人をつけずに相続手続きができます(遺言の内容によります)。
当事務所では精神障害者の方の相続手続きや遺言の作成を専門的に取り扱っていますので、お困りの際はぜひご相談ください。
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