遺言執行者とは相続手続きを行う権限を持つ者
遺言を作成する場合、基本的には遺言執行者が必要です。
遺言執行者を決めておけば、その者が誰の関与も必要とせず、相続手続きが完結できるからです。
また親なきあと対策として、意思能力の無い子が相続人にいる場合は「絶対に」遺言執行者の指定が必要になります。
なぜなら、遺言執行者を指定しておかないと、意思能力の無い子に成年後見人をつけて手続きを行う必要が出てきてしまうからです。

この遺言執行者ですが、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家を指定している遺言が多くあります。
むしろ遺言の作成サポートをお願いしている専門家に流れでそのまま依頼しているケースが多いと思われます。
しかし遺言執行者を第三者に指定することには大きなリスクがあることを知っている者は多くありません。
今回は遺言執行者を第三者である専門家に依頼することのリスクと、原則的には家族を指定したほうが良い理由について説明します。
遺言執行者を第三者にするリスクとは?
当事務所では原則として遺言執行者に直接なることは行なっておりません。
なぜなら私が遺言執行者より先に死亡する可能性があるからです。

私が遺言執行者になったとしても、私が遺言執行者よりも先に亡くなってしまった場合、遺言自体が無意味になってしまう可能性があります。
そのため、私が亡くなった時点で遺言を作り直すことを検討しなければならず、遺言を作ったとしても十分に安心できる状況になったとは言えません。
予備者を設定しておけばいいんじゃない?
専門家等に遺言執行者を任せた場合、予備者を設定しておけばいいのではないか?とお考えの方も多いと思います。
もちろん予備者を設定しないよりもしたほうが良いです。
しかし結局はその者も亡くなってしまっては同じ結果になります。
それを防止するために何人も予備者を設定しておくのも遺言内容が複雑になり、また費用も多くかかってしまう可能性があります。
遺言執行者は家族や親族を設定するのがベストな理由
当事務所では、原則的に家族の誰かを遺言執行者にすることをお薦めしています。
その理由としては、最も安価であり、またいざ執行する場合にも柔軟性があるからです。
例として、父、母、長女、次女(重度障害)の4人家族で、父と母が遺言を作る場合、遺言執行者の指定の方法の例としては、
- 父の遺言では母が、母の遺言では父を遺言執行者に指定する
- 遺言執行者が先に死亡した時のために、長女を予備者に設定しておく
という形が基本になります。

遺言執行業務は遺言執行者から第三者に委任できる
遺言執行業務は専門家などの第三者に委任することができます。
そのため、もし自分が遺言執行者となっているが遺言執行手続きが大変であると思ったら、専門家に依頼することもできるのです。
しかも遺言執行を委任するのは遺言執行者の権限で行えるため、遺言執行者自身が良いと思った条件や人柄で選ぶことができるのもメリットと言えます。

家族がみんな亡くなっていたら遺言執行者がいなくなってしまうんじゃない?
しかし「家族を執行者と予備者にしても、その者が亡くなってしまったら専門家に設定した時と同じ結果になるんじゃない?」という疑問も浮かぶと思います。
実は遺言執行者と予備者となる家族が亡くなってしまった場合、遺言の意味自体も亡くなる可能性があります。
これは特に親なきあと対策のための遺言において言えることですが、先述した4人家族の場合、次女以外の家族が亡くなった場合、遺言は意味を為さなくなります。
なぜなら、相続財産は全て次女に渡ることになり、また次女には成年後見人をつける必然性が出てきてしまう(次女をみてくれる者がいないため)からです。
そうなると遺言執行者を指定しておくメリットはあまりありません。
親なきあと対策としての遺言を作成しておく主な目的は、
- 財産を障害のある子以外に移転させること
- 障害のある子を関与させずに相続手続きを行うこと
であるため、残された家族が障害のある子だけになってしまった場合は、遺言があっても無くても同じ結果になるという家族が多いでしょう。
ところで予備者は何人も指定しておいて構わないのですが、家族の人数に合わせて1人~2人を指定する家庭が多いです。
【例外】遺言執行者を家族以外の第三者にしても良い場合
家族や親族がいない場合
遺言執行者になってくれる者が誰もいないという場合は、専門家を遺言執行者にしても良いと思います。
しかし、遺言執行者が誰もいないということは、前述したように「そもそも遺言が必要ない場面」かもしれません。
子が意思能力の無いほどの重度障害があった場合、親や兄弟、その他の親族がいなければ、遺言を作る必要自体無い場合が多いですし、一人になってしまった子どもには成年後見人をつけたほうが良いと思います。
もちろんそういった理由以外でも遺言を作成することはできますので、そのような場合は第三者を遺言執行者にすることにもメリットはあります。
なお後述しますが、その子以外に財産を渡したいと考えている場合(知人や施設、お寺等)は、その渡したい者を遺言執行者にすれば良いと思います。

専門家が法人の場合
現在、弁護士や司法書士、行政書士などで法人化しているところは多くあります。
専門家が法人の場合は死亡のリスクは無くなります。
遺言作成時の担当者が死亡していても代わりの者が遺言執行をできるからです。

しかし法人が解散した場合は死亡と同じく遺言執行者不在の状態になってしまうため注意が必要です。
知人や施設、お寺などに寄付予定がある場合
知り合いや障害のある子がお世話になっている施設、また自分達のお墓のあるお寺などに寄付をしようと考えている場合は、その者を遺言執行者にすれば良いと思います。
例えば、父がすでに亡くなっており、母が亡くなったことで障害のある子一人が残される場面での母の遺言内容は、
「金1000万円は子に、残りの財産は全て社会福祉法人〇〇会に遺贈する。遺言執行者は社会福祉法人〇〇会の代表者に指定する。」
という旨のものにします。
こうすれば、その社会福祉法人は、適切に遺言執行者を行うでしょうし(寄付がもらえるため)、遺言執行者を専門家に依頼することもできるため、それほど負担にはならないと思います。
ただし第三者を遺言執行者にする場合、スムーズに遺言執行業務を行ってもらえるよう、事前に話をしておきましょう。また遺言執行は他者に委任できる旨も説明しておくと良いと思います。
早めに遺言を作って残った家族に安心を届けよう!
ということで、遺言執行者をきちんと設定した遺言を作っておくことで、残された家族に安心を提供できます。
遺言執行者の業務は難しいと感じてしまうでしょうが、第三者に委任することができるため、ご家族もそれほど負担にはならないでしょう。
遺言と委任状があれば、ほとんどの専門家が遺言執行業務を行ってくれます。
遺言執行者を探すのに時間をかけるのではなく、家族を遺言執行者に設定し、早めに遺言を作成することをお勧めします。


