成年後見人をつけた場合とつけない場合の「本人の保護」についてどう違うのか

成年後見人をつけない相続

成年後見人をつけた場合とつけない場合は何が違う?

成年後見人をつけると何が違うのか。もちろんこれについてご存知の方は多くいらっしゃると思います。

制度上のメリットとして謳われているのは「本人の権利が保護される」「財産が守られる」、などですが、成年後見制度はメリットだけではありません。

今回は成年後見人をつけた場合、本人には「実際に」どんな違いが現れるのかを考えてみたいと思います。

※成年後見人がどんな影響を及ぼすのかは本人や家族の環境によって人それぞれです。ここでは成年後見制度の原則から導き出される想定による事例を挙げていることをご了承ください。

障害者のいる家族の円満な相続

本人の権利が守られるということの意味

成年後見制度の大きなメリットとして謳われているのは「本人の権利の保護」ですが、これは本当とも言え、嘘とも言えます。

なぜなら、成年後見制度はあくまでも成年後見人次第という部分が大きいからです。

成年後見人の是非

例えば実際についた成年後見人がいい加減な人物だったらどうでしょう。当然本人の権利の保護に欠ける可能性が高いでしょう。

また、成年後見人が誠実な人間で法に則り成年後見業務を遂行する場合はどうでしょう。

実はこの場合でも本人の権利が必ずしも守られるというわけでは無いのです。

本人の権利の保護って何?

「本人の権利の保護」とは一体どんな意味なのでしょうか。

本人が40歳の時に起きた相続の歳に成年後見人がついた時とつかなかった場合を想定してそこからの流れを考えてみましょう。

※想定ケース

知的障害があるが、家族が本人の世話をしており、特に今までは成年後見人を必要としていなかったケース。

本人に成年後見人がついた場合

本人の法定相続分が守られ、現金500万円及び非住居の不動産持ち分2分の1を取得することが出来た。

これだけを聞くと成年後見人により「本人の保護が図られた」と思えます。

しかし成年後見人に支払う報酬が月2万円だった場合、本人が80歳で亡くなったと考えると合計額は960万円となります。すでに相続財産として引き継いだ額は超えてしまうわけです。

成年後見人に必要な多額のお金

成年後見人をつければ法定相続分は確保できます。しかし成年後見人をつけたことでその法定相続分を遥かに上回る報酬を支払わなければならなくなることもあるのです。

本人に成年後見人をつけなかった場合

成年後見人をつけずに遺産分割協議を行い、本人の相続分をゼロにした。現金はおろか、不動産の持ち分も与えなかった。

これだけ聞くと本人の権利を侵害するひどい家族だと思われても仕方ありません。

しかし、本人の法定相続分の預貯金は他の兄弟が丸々確保し、その兄弟名義で口座を作り、本人のために使用した。そして非住居用不動産は売却し、本人の法定相続分にあたる金額を同口座に入金した。

本人の口座から家族が出金する

上記の事情を聞くと、成年後見人をつけなくても本人の財産が保護されていると考えられるでしょう。

では、成年後見人報酬として予想された960万円はどうなるでしょう。

「本人のためになること」に使えば良いのです。

成年後見人が本人のためになることをどこまで理解できるか

それでは、成年後見人が本人のためになることをどこまで考えられるかというお話をします。

先程例に挙げた「誠実で法を忠実に守る」というタイプの成年後見人でもこの点についてはなかなか難しいものがあります。

おそらく、「出費を必要最低限にして財産を多く残すようにする」可能性が高いでしょう。

いくら多くの財産を持っていてもいい加減に使ってはなりません。成年後見制度の本旨に反するからです。

先程の遺産額で考えれば、生活保護を念頭に置いて支出を考えなければならなくなります。成年後見報酬は死ぬまで必要となるからです。

一方、成年後見人をつけなかった場合、今まで通り家族が本人のためになると考えたことにお金を使うことができます。

成年後見報酬は不要となるため、毎月その分を本人の好きなことに使わせられると考えても良いかもしれません。

例えば本人の「趣味に関する出費」に関しても、本人の将来的な財産を考えると、成年後見人によっては制限を加えることになるでしょう。成年後見制度が考える「本人の権利の保護」にはならないからです。

成年後見人のメリットとデメリットを考える

以上のことを考えると、成年後見人をつけた場合には本人の権利の保護に関してデメリットばかりあるのではないかと思ってしまいますが、成年後見人をつけた場合にもメリットはあります。

大きなところでは「詐欺」から本人を守ることができるという点です。後見類型(後見・保佐・補助)にもよりますが、本人が行ってしまった契約なども成年後見人が取り消すことができます。

詐欺による契約を成年後見人が取り消す

また、成年後見人は「家族からの搾取」からも本人を守ることができます。本人が持っている財産は成年後見人が管理することによって家族も手出しができません。

しかし、本人の財産を狙った家族が任意の成年後見人をつけ、または自身が成年後見人となり必要以上の支出を行おうとすることも考えられますので注意が必要です(成年後見人による横領事件)。

結局のところ、成年後見制度を活かすも殺すも「成年後見人をつけるタイミング」「成年後見人候補者を誰にするか」にかかっていると言えます。本人の状態及び本人を取り巻く環境や家族構成、財産の額や種類などを考え、成年後見人をつけるか否かを検討する必要があります。

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