成年後見制度は市民から嫌われてしまった制度
2000年に成年後見制度が始まり、国は市民により広く浸透するよう周知に努めています。
しかしその反面、制度の闇の部分も広まっていき、今や市民から敬遠される制度となってしまいました。
なぜ成年後見制度はこんなにも問題となってしまったのか。これには様々な理由があります。
成年後見制度の不理解や専門家の不正などが原因として挙げられていますが、根本的な理由は他にもあります。
今回は、行政書士と社会福祉士両方の国家資格を持つ私が考える、成年後見制度が問題となってしまった理由について解説していきたいと思います。
成年後見制度が嫌われてしまった根本的な原因は2つ!
成年後見制度がこれほどまで問題視されてしまった原因としては、大きく2つあります。
一つは「高齢者施策に伴って始められてしまった」という点と「法律と福祉の理想のギャップ」です。
もちろん成年後見人の不正や制度の不理解なども理由となっているのですが、基本的には専門家は適正に業務を行っている者がほとんどです。

しかしこの「適正」というところに問題が生じてしまったと私は考えます。
その点を含めてそれぞれの理由について解説していきます。
成年後見制度は高齢者と障害者を一緒にしてしまったことが大きな誤り!
成年後見制度は主に「認知症」と「知的・精神障害」に対応した制度と言われています。
しかし認知症患者と知的・精神障害者では大きな違いがあります。
それは、「先天性・後天性」と「平均年齢」です。
まず先天性・後天性について、認知症は後天性の病気です。
若年性認知症もありますが、多くは高齢期に発症するものです。
一方知的障害および精神障害の一部は先天性のものです。生まれた時からその症状があり、一生を辿っても症状に大きな変化が無いことが特徴です。

となると「意思能力があったのに無くなったので支援されることになった」のが認知症、「意思能力が無く、親権者により支援されていたものが、成人したために成年後見人から支援されることになった」のが知的障害と一部の精神障害と言えます。
そのため、成年後見人をつける年齢としては「認知症=高齢者、障害=若年者」となるため、被後見人の平均年齢が大きく異なるのです。
(話は逸れますが、もし知的障害者に対してだけ親権が継続できたら…、と考える親御さんは結構多いのではないでしょうか?知的障害者を成人として尊重することと親権を外すことはまた別の話なのではないかと考えてしまいます。)
そこに同じ制度を適用させることには無理があります。高齢者対策と障害者対策に同じ法律を適用させるようなものです。
仮に現行の老人福祉法と障害者総合支援法が無く、「弱者支援法」なるものがあって、それを両者に運用しているなんて無理がありますよね。今の成年後見制度は正にそのような状況なのです。
認知症と障害者で明らかに違う点として挙げられるのは「家族環境」です。
認知症患者を支援している家族は「子」が多く、障害者を支援している家族は「親」が多いため、真逆の家族環境になっているのです。

また被後見人の平均年齢が大きく違うということは、成年後見人が就いている期間とそれに伴い成年後見人に報酬を支払う期間が大きく違うと言えます。
即ち認知症と障害者では負担が大きく異なるのです。

法律と福祉では「本人の保護」が真逆の考えになってしまう!
次は成年後見人自身の問題点です。
成年後見人には、司法書士、弁護士、行政書士、税理士、社会福祉士などの専門家が就任することが多く、特には司法書士、弁護士、社会福祉士の割合が多いです(3者で約8割を占めています)。
「成年後見に関しての専門家」と同じ括りになっていますが、実はこの専門家達で全く考え方が違うのです。
例えば司法書士と弁護士が得意な分野なのは「民法関係」、社会福祉士が得意な分野なのは「社会福祉法関係」ですが、ここに大きな問題があります。
例えば、被後見人にお金のかかる趣味があったとします。すると2つの意見に分かれるでしょう。
A.お金のかかる趣味は財産を減らしてしまうから悪
B.お金がかかるからと本人が好きなことができなくなるのは悪

極端に言うと、Aが司法書士や弁護士の考える本人の保護、Bが社会福祉士の考える本人の保護です。
同じ自己実現を考えた時、Aの考えでは財産が重要視されるのに対し、Bの考えでは財産は重要視されません。
そのためAの考えでは、被後見人が亡くなった時、財産が減っていなければOK。Bの考えでは、被後見人が亡くなった時、財産が無かろうが本人がやりたい事ができていたらOKということです。
ここまで両極的な考えの者達が同じ成年後見人なのですから、もはや「ガチャ状態」になるのは当然です。(もちろん成年後見人それぞれに考えがあるため、資格によって一律の考え方というわけではありません。)
統一されかつバランスの取れた指針があれば利用する側も納得感はあると思うのですが、現状は「成年後見人ガチャ」という運任せな状態であることも利用数が伸びない原因の一つだと思います。

法改正では本人や家族にとって望んだ結果にはならない
令和8年現在、成年後見制度が改正されるという話が進んでいます。
成年後見人の解任に柔軟性を持たせ、利用しやすくするという目論見ですが、これは本人や家族にとって100%満足いくよう結果にはならないと思います。
現状よりかは改善してくれれば良いと思いますが、逆に制度自体の利用が推進されてしまうため、どんな状況になるかは正直予想できません。
法改正に期待するよりも、成年後見制度を利用したいのであれば納得いくまで理解し、利用したくないのであれば利用しないための対策をとっておくことが最も重要だと思いますので、お困りの際はお早めにご相談ください。


