親なきあと対策として子ども名義の通帳に貯金をしてはいけない?
親が亡くなった後の子に対する不安を解消するためには色々な対策があります。
その一つとして、「子のために貯金をしておく」ということがあると思います。
それはもちろん必要ではあると思うのですが、その方法として「子ども名義の通帳を作ってその通帳に親が貯金していく」ということを考える方も多いと思います。
しかし「子ども名義の預金通帳に親が貯金を行う」というのは状況によっては後々困ることもあります。今回は子ども名義の貯金通帳を作るべきではないパターンについてお伝えしたいと思います。
子ども名義の預金通帳を作って親が貯金をしていくことに危険性があるパターンとは
それでは、子ども名義の預金通帳を作って親が貯金をしていくということに危険性があるパターンとはどのようなものでしょうか。
※子自身の障害年金用通帳とは別の考えです。
子に障害があり家族の誰かが亡くなった際に子以外にも家族が残る場合
「子に障害があり、家族の誰かが亡くなった際に子以外にも家族が残る場合」とはどのようなパターンでしょうか。具体例を挙げて説明します。
父親、母親、障害のある兄、健常者の弟の4人家族
この場合、障害のある兄名義の通帳に貯金をしていくのはリスクがあります。
そのリスクが現れるのは「家族の誰かが亡くなった際の相続手続きで兄に成年後見人がつくことになった場合」です。
兄にいくらお金を残していても、そのお金は成年後見人が管理することになります。通帳が成年後見人の元に渡ってしまうのです。
成年後見人をつけたくないと考えてしまうポイントとその対策について解説します!
成年後見人は基本的には法定相続分での遺産分割協議にしか応じてくれません。
子の名義の貯金通帳は実質親が貯金をしていたとはいえ、子固有の財産となる可能性が高いです。
もちろん子の生活に必要となる範囲の額であれば特に問題ありませんが、その貯金を家族でも使用するつもりであった場合は今後一切不可能となります。
ということは、相続の際に実質「法定相続分」+「兄名義の貯金」が兄の名義となり成年後見人の管理下に置かれます。そのため、他の家族よりも多くの財産が渡されることになってしまうのです。
弟名義の預金通帳にしておけば…
上記のパターンで弟名義の貯金通帳に親がお金を貯めていた場合であれば特に問題ありません(多くの額を貯金するには贈与税の問題はあります)。
兄に成年後見人がついた場合でもその貯金は家族の自由に使うことができるからです。
もちろん法定相続分は兄の元に渡りますが、両親が子のために貯めていたお金が成年後見人の管理下に移ることを極力避けることができます。
弟名義で預金通帳を作っておいた意味については、生前から弟に趣旨を説明し、有効に活用してもらうようにしましょう。
キャッシュカードと暗証番号でお金を引き出すことは横領のリスクあり
「兄の口座のキャッシュカードと暗証番号は知っているのだから成年後見人がつく前に引き出しておこう」と考える方も多いと思いますが、それは絶対にやってはいけません。
成年後見人がつかなければ問題はありませんが、相続の際に成年後見人がつくことになった場合はその直前の出金には懐疑の目が向けられるでしょう。
家族間のことなので横領罪で訴えられることはまずないでしょうが、成年後見人から返還を求められることは充分にあり得ます。
障害のある子のための親なきあと対策は「他の家族にお金を残しておくこと」がベター
例に挙げたとおり、障害のある子自身の名義で財産を残すことは、子自身にとっては問題がなくても、その他の家族に影響を及ぼすことがあります。
特に多額の財産を残してしまうと使いきれず最終的に国庫に帰属してしまうケースもあり得ます。
障害のある子に残しておきたい財産は必要最低限にしておき、残りは他の家族名義の「自由に使える財産」にしておくことで、その他の家族のためにも障害のある子のためにも使えるお金になります。
家族の状況が「将来成年後見制度を利用するケース」に当たるか否かを今のうちに想定しておき、状況にあった財産管理をしていくことが重要となります。