成年後見人をつけることになったらまずはじめに行うことは「裁判所への申立」では無い!
家族の誰かに成年後見人をつけることになり、何から始めれば良いかお困りの方も多いと思います。
成年後見人をつけることになった理由は様々だと思いますが、
- 市町村
- 銀行等
- 福祉施設
- 専門家(弁護士や司法書士等)
から言われたからという方が多いのだと思います。
ではまず何から始めるかですが、よくあるマニュアルでは「病院」や「家庭裁判所」と書いてあると思います。

病院では医師から意思能力についての意見書をもらう必要がありますし、家庭裁判所では実際に成年後見の申立を行います。
しかし、すぐに申立に動くことは危険です。なぜなら成年後見人になる者が決まっていないからです。
まずはじめに「誰が成年後見人になるのか」、「誰を成年後見人にしたいのか」を決める必要があります。
誰を成年後見人にするかで大きく変わる!
誰を成年後見人にするのかで、この先が大きく変わります。
むしろ成年後見の申立手続きで最も重要になるのが成年後見人の個性です。
どのような人間が成年後見人になるのが好ましいのかは以前の動画でも触れていますが、まずは「どのカテゴリーの」人間がなるのかを考えなければなりません。
成年後見人になる者を大きく2つに分けると、「家族(親や兄弟、子)」と「専門家」ですが、専門家もさらに分類することが重要です。
各専門家で違うことが「費用」と「得意分野」ですので、被後見人となる本人の状況に応じた資格者を選びましょう。
次からは各候補カテゴリーの者の特性や注意点について説明していきます。
家族(親・兄弟・子・親戚含む)
まずイメージするのは家族が成年後見人になることだと思います。
家族が成年後見人になることの一番のメリットは「費用がかからない」ということです。
もちろん親戚などにやってもらう場合は費用を請求しても構いませんが、近しい関係にあればあるほど無報酬で行ってもらえる可能性が高いと思います。
しかし家族が成年後見人になると大きなデメリットがあります。
成年後見人業務の負担
家族が成年後見人になった場合でも、法律上は第三者が成年後見人になったこととは全く変わりません。
成年後見人の義務や権利は全て同じです。
ということは、親族相盗例は適用されず(親族間での横領等は罪に問われないこと)、逮捕される可能性もあるわけです。

家族間であれど、罪に問われる可能性も持ちながら成年後見人を行うのには相当なプレッシャーがあると思います。
事前に契約を行う任意後見であれば後見監督人がつきますし、家族が後見人になったばあいでも後見監督人がつく場合が多くあります。
家族間でのことなのに第三者の後見監督人からチェックされ続けるということは、常に緊張感を持たなければなりません。
それが成年後見制度の真意だとしても、無報酬で行うのには全く釣り合いが取れないと思う方も多いでしょう。
司法書士を成年後見人にしたい
成年後見業務を最も多く受け持っているのが司法書士です。
司法書士は裁判所関係の手続きを行うことができますので、管轄である家庭裁判所と密接な関係にあるのかもしれません。
申立手続きや不動産登記の実務は得意であるため、成年後見人をつけるという初期段階では、最もスムーズにいく専門家だと思います。

特に当てはないが、司法書士に成年後見人になってもらいたいと考えている場合は、まずリーガルサポートという団体に連絡してみるのが良いでしょう。
リーガルサポートは、成年後見についての支援を行っている公益社団法人であり、司法書士で構成されています。
全国で50の支部があり、8500人の会員がいるそうです。
そのため、自分の居住地の近くでも候補者が見つけやすいと思います。
ただし、司法書士で福祉の現場経験が豊富な者は多くはいないと思います(少なくとも私が知る限りでは一人もいません)。
そのため福祉の知識が豊富な司法書士というのを探すのは極めて困難でしょう。
しかしリーガルサポートでは登録時および定期に内部研修を行っており、その専門性を高められるよう日々努めているようです。
弁護士を成年後見人にしたい
弁護士は法律関係の最高資格であり、全ての法律行為の代理ができる資格です。
そのため安心感は最もありますが、逆に言うと報酬が高い傾向にあるようです。
また、成年後見報酬は被後見人の財産によって決定されるので、報酬があまり高くないケースでは候補者になってもらえない可能性もあります。
これはある意味仕方のないことであり、成年後見業務は、報酬の高低のみで業務の内容が変わるものではありません。
財産が少ない人であっても、財産が多い人よりも業務の負担が大きいことは当たり前にあります。
そのため、弁護士業務を円滑に行えるようなケースでないと受けることが困難になってしまうのです。
訴訟の提起を理由にした成年後見の申立においては最も円滑に進められる専門家ではあるため、状況に応じて考えておくと良いでしょう。

なお、全国で統一された弁護士のみの専門団体は無いようで、ペアサポートという弁護士と社会福祉士が共同で後見人になってくれるという一般社団法人があります。
その他、地域により弁護士の専門団体がありますので、ご希望であれば調べてみると良いでしょう。
社会福祉士・介護福祉士を成年後見人にしたい
社会福祉士や介護福祉士は社会福祉に関しての専門資格です。
社会福祉士は相談業務、介護福祉士は介護業務に特化しています。

成年後見業務を行っているのは社会福祉士が多く、司法書士、弁護士に続いて3番目に多く成年後見人となっています。
介護福祉士のみの資格で成年後見業務を行っている者はほとんどいませんが、社会福祉とのダブルライセンスで成年後見人となっている者はある程度いると思います。
成年後見の支援を行っている専門団体としては、ぱあとなあという公益社団法人があり、成年後見についての利用支援を行っています。
社会福祉士は福祉現場での豊富な経験がある者が多くいるため、身上監護や福祉サービスについての方針を決定する知識は他の専門家に比べると高いです。
また成年後見報酬の費用も安くなる傾向があるようで、財産が少ない被後見人でも候補者になってもらえる可能性は高いと思います。
結局どのカテゴリーの成年後見人を候補者にするのが良いのか?
以上、各カテゴリーでの候補者について簡単に説明しましたが、一体どの方法を取るのが良いのでしょうか?
家族が成年後見人になるのが最も理想であり、実際に希望される方も多いです。
しかし、業務を正確に行わなければならないことや後見監督人からチェックを受けるという精神的負担を考えると、一概には言えないと思います。
一方専門家としては社会福祉士が候補者としては理想だと思います。

被後見人は全ての場合に福祉と密接に関係してくるからです。
また社会福祉士は、資格上本人の自己実現を第一に考えますので、本人の生活費や娯楽費の無理な節約などに走る可能性は低いと思います。
実際、成年後見人になりたいと思われる被後見人は「財産が多い・永遠に施設入所・面会不要」です。
このように決まった条件でないと受けない(受けられない)専門家もいます。
あくまでも個人的な意見ではありますが、社会福祉士においては、このような理由で候補者になってくれないというケースは少ないと考えます。
また社会福祉法人が成年後見人になってくれる「法人後見人」という形態もあるのですが、これはあまり多くは見られていません。
法人後見の大きなメリットは「後見人が死なない」ことであり、法人内で臨機応変に担当者を変えて対応することができるので、被後見人は急激な環境変化を避けることができます。
しかし生活保護受給者であったり、誰も候補者になってもらえない理由があったり、市町村長申立のみに限定していたりと特別なケースのみ候補者になっている場合が多いため、自由に選べるとは考えないほうが良いでしょう。
結論としては被後見人の状況に合わせて、
福祉的支援重視→社会福祉士
候補者の多さ・迅速な申立→司法書士
訴訟準備中などの特殊な状態→弁護士
などと考えていくのがベストだと思います。
当事務所では成年後見業務を行っておりません
私は社会福祉士と介護福祉士の資格を持ち、福祉現場での経験が20年ある行政書士です。
成年後見人になって欲しいというご相談もしばしば受けるのですが、成年後見業務は行っておりません。
その理由としては、私が成年後見人になったら、被後見人に対して面会に行かないということはあり得ないでしょうし、本人の希望と状況に合わせた福祉サービスの提供と財産の使い方を求めていきます。
となると、件数を引き受ければ引き受けるほど一人に対しての接し方は希薄になっていき、ゆくゆくはお金のために成年後見人を引き受けているという状況に陥ってしまうかもしれません。
また成年後見人を付けられる側としてのデメリットも重々承知しています。全ての人に歓迎されて成年後見人になれるわけではありません。

そのため、当事務所ではできるだけ成年後見人をつけたくないという多くの人のために、成年後見人はやむを得ない場合にのみつけるべきであるというスタンスを取っています。
ということで、現在では成年後見人をつけないでいられるためにはどのようなことを準備しておけば良いか、どのような手段があるのかをアナウンスし、お困りの方への支援を行っています。
成年後見人をつけてと言われたがどうすれば良いのか、何かできることはないのかとお困りの方は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。




