障害のある子の銀行口座はこう作るのが正解!一歩間違えると一切下ろせなくなります

成年後見人をつけない財産管理

はじめに:親の「良かれと思って」が、将来の口座凍結を招く

障害のあるお子さんの将来を心配し、「自分が元気なうちに、少しでも多くのお金を残してあげたい」と考えるのは、親として当然の愛情です。その愛情から、お子さん名義の銀行口座を作り、コツコツと手当や年金を貯金しているご家庭は非常に多くいらっしゃいます。 しかし、障害者・認知症の財産管理の現場から見ると、この「障害のある子名義の口座にお金を貯めこむこと」は、一歩間違えると取り返しのつかない事態を招く非常に危険な行為です

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お子さん自身が窓口で意思表示をしたり、書類に署名したりすることが難しい場合、金融機関は「本人の意思確認ができない」として、その口座からの出金や解約を拒否します。いざ生活費や施設費用としてお金を下ろそうとした時に、銀行から「成年後見人をつけないと手続きできません」と告げられ、結果的に多額の費用と手間がかかる成年後見制度を利用せざるを得なくなるケースが後を絶ちません。

本記事では、障害のあるお子さんの未来を守るために、親が絶対に知っておくべき「口座管理の失敗例」と、それを防ぐための「正しい銀行口座の作り方とやってはいけない財産管理方法」について詳しく解説します。

第1章 絶対にやってはいけない!親が陥りがちな3つの失敗例

失敗例① 特別児童扶養手当等を障害のある子名義の口座に貯金してしまう

特別児童扶養手当等は、障害のある児童を養育している「保護者(親など)」に対して支給される手当です。しかし、「この手当は子どものためのものだから」と、親の口座に入った手当をお子さん名義の口座にそのまま移して貯金してしまったりする方がいます。

これは大きな失敗のもとです。お子さん自身が財産を管理・運用できない状況で多額のお金が子名義の口座に貯まると、いざお金が必要になった時に、親であっても自由にお金を引き出すことができなくなります。また、税務署からは「名義は子どもだが、実質的にお金を出しているのは親(名義預金)」とみなされ、親の相続発生時に親の財産として相続税の計算に組み込まれてしまうなど、無駄な税務トラブルを引き起こす原因にもなります。

失敗例② 障害年金を下ろさずに親のお金で生活してしまう

お子さんが20歳になり障害年金を受給し始めた際、「子の年金には一切手をつけず、日々の生活費は親の収入から出そう。年金は子の将来のために全額貯めておこう」と考えるご家庭も非常に多いです。

しかし、これも後々ご家族の首を絞めることになります。親の資金だけで生活し、子どもの口座に多額の障害年金が貯まったまま親が亡くなった場合、そのお金は誰が管理するのでしょうか。残された健常な兄弟姉妹がサポートしようにも、子どもの口座の莫大なお金を勝手に動かすことはできず、結果として成年後見人をつけざるを得なくなります。

さらに恐ろしいのは、もしお子さんがその多額のお金を使いきれずに亡くなり、サポートしていた兄弟姉妹もすでに亡くなっていた(または親族がいない)場合、その財産は最終的に「国庫に帰属」してしまいます。親が苦労して子のために貯めた障害年金が国に渡るという悲劇を防ぐためには、「子の障害年金を日々の生活費や施設利用料として率先して使う」生活にシフトすることが絶対条件です

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失敗例③ 障害のある子に貯金(定期預金など)をしてしまう

上記の2つにも共通しますが、そもそも「障害のある子(意思能力に不安のある子)名義の口座に多額の貯金をすること」自体が最大のリスクです。 特にやってはいけないのが、「定期預金」を作ってしまうことです。

定期預金は普通預金と違い、当然キャッシュカードで下ろすことはできませんが、解約の際も極めて厳格な本人確認が求められます。本人の意思確認なしには絶対に解約できず、事実上「持っているのに一生使えないお金(凍結財産)」と化してしまいます。

本人の生活資金を残すのであれば、本人名義で貯金するのではなく、「本人のためにお金を使ってくれる信頼できる兄弟姉妹などに、遺言で多めに財産を渡し、その財産から本人のために支出してもらう」という仕組みを作るのが、財産凍結を防ぐ鉄則です

第2章 障害のある子の銀行口座はこう作るのが正解!3つの鉄則

では、日々の生活費や障害年金を受け取るための「日常使いの口座」は、どのように作り、どう管理すればよいのでしょうか。以下の3つを参考にしてください。

正解① 未成年のうちに口座を作る場合は必ず「キャッシュカード」を作ること

お子さんの口座を作る際、「どうせ子どもが自分で下ろすことはできないだろう」と通帳と印鑑だけで管理し、窓口で引き出そうと考えている方は要注意です。本人が未成年のうちは、親が法定代理人(親権者)として窓口でお金を引き出すことができます。しかし、お子さんが成人(18歳)した瞬間、親権は消滅し、親であっても窓口で本人名義の預金を引き出すことは原則できなくなります。

窓口では厳格な意思確認が行われるため、本人が対応できない場合、「成年後見人をつけてください」と突き返されます。 これを回避する現実的な手段が、「キャッシュカード」を作り、家族が暗証番号を管理しておくことです。普通預金であれば、キャッシュカードと暗証番号さえあれば、ATMで日々の生活費を引き出すことが可能です。親が元気なうちにキャッシュカードを作成し、暗証番号を家族間で共有しておくことが、当面の生活資金を確保する唯一の命綱となります。

正解② ネット口座を持っておくこと

キャッシュカードを作っておけば一安心、と思いがちですが、ここにも落とし穴があります。それは「カードの磁気不良」や「紛失」です。 長年使っているキャッシュカードが突然ATMで読み取れなくなった場合、カードの再発行手続きが必要になります。しかし、再発行には窓口での手続きや本人の署名などが求められることが多く、本人が窓口に行けなければそこで詰んでしまいます

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このリスクに備えるための正解が、「ネット口座(インターネットバンキング)」を利用できるようにしておくことです。 ネットバンキングを開設しておけば、万が一キャッシュカードが使えなくなっても、スマートフォンやパソコンからの操作で、親や兄弟名義の口座に生活費を送金することができます(キャッシュカードの再発行がネット上で完結できる銀行もあります)。また、わざわざ通帳の記帳に行く手間も省け、将来的に遠方に住む兄弟姉妹がキーパーソンとなった際にも、離れた場所から本人の入出金管理をサポートしやすくなるという大きなメリットがあります。

正解③ 障害年金の変更先として使える口座を持っておくこと

障害年金の振込先口座は、一度設定したら一生そのままというわけではありません。将来、親が亡くなって兄弟姉妹がサポートするようになったり、本人がグループホームなどの施設に入所したりした際、お金の管理体制が変わることがあります。

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施設によっては、利用料の引き落としのために「この銀行の口座を作ってください」と特定の金融機関を指定してくることがあります。また、万が一成年後見人がついた場合には、後見人が管理しやすい口座へ年金の振込先を変更する必要が生じることもあります。

このような将来の環境変化に備え、お子さん名義の口座は一つに絞るのではなく、「障害年金の振り込み、施設費用の自動引き落とし(または施設に預ける用)に使う口座」と、「万が一口座が凍結された時や障害年金の振込先を変えるようになった時に使える口座」の、性質の違う複数の口座を持っておくことをお勧めします。そして、いざという時に年金の振込先をスムーズに変更できるよう、年金証書やマイナンバーの保管場所を家族で共有し、年金事務所での手続きの流れをあらかじめ把握しておくことが重要です。

まとめ:親の「良かれと思って」を、正しい「法的な備え」へアップデートする

障害のあるお子さんの財産管理において、「口座にお金を貯めこむこと」は安心の材料ではなく、むしろ成年後見制度へ巻き込まれる火種になり得ます。

  • 特別児童扶養手当や障害年金を、本人の口座にむやみに貯めこまないこと。
  • 本人名義の定期預金などは絶対に作らないこと。
  • 口座は必ずキャッシュカードを作成し、できればネットバンキングも開設しておくこと。
  • 将来の環境変化を見据え、年金振込先として柔軟に使える口座を複数準備しておくこと。

これらはすべて、お子さんが成人する前、あるいは親が元気で動ける「今」だからこそできる対策です。「まだまだ先のこと」と後回しにせず、口座の作り方やお金の動かし方といった身近なところから、ご家族にとって最適な「親なきあと対策」を見直してみてください。

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