障害者の相続手続きは相続の専門家よりも障害者に理解のある専門家に任せた方が良い?
障害者の相続手続きは、通常の相続手続きと大きく変わります。
例えば、通常の相続手続きには「成年後見人」なんてものは登場しません。
相続人が話し合って財産の分割をし、それに沿って名義移転手続きを進めれば良いだけです。
しかし、知的障害者や精神障害者が相続人に含まれるパターンの相続手続きには、「成年後見制度」が絡んでくることが良くあります。
もちろん、成年後見制度を必ず利用しなければならないわけではありません。障害の程度により成年後見人等が必要かどうかは個別に判断されるべきだからです。
しかし、専門家によっては「とりあえず成年後見人」のような判断をする者も少なからずいます。そのため、依頼する専門家によって、家族の行く先が大きく左右されてしまうのです。
障害者の相続手続きは相続手続きのベテランに頼むか障害者福祉のベテランに頼むか
では、障害者の相続手続きは、相続手続きのベテランに頼むのと、障害者福祉のベテランに頼むのではどちらが良いのでしょうか。
これは一概には言えません。しかし、いくら相続手続きに慣れていても知的障害者や精神障害者と触れ合う機会が無い専門家はたくさんいます。
知的障害者や精神障害者への理解は、ネットや本で調べるだけでは深まりません。現場経験が無ければ知的障害や精神障害を深く知ることはできないからです。
「自閉症スペクトラム?」、「統合失調症?」、基本的な用語でさえも医学的要素を含むため、言葉を聞いただけで理解することは不可能でしょう。
また、障害について自閉症スペクトラムと分類された方と言えども、日常生活上の行える範囲も人それぞれで違います。安易にラベリングすることは避けるべきです。
そのため、知的障害や精神障害への理解が無ければ、「成年後見制度の利用が必要か否か」などは到底判断できないのです。
無論、成年後見制度が必要か否かなどは最終的には家庭裁判所の審判や、訴訟までいかないと分からないことです。しかし、障害全てを一くくりに「成年後見人が必要」と判断することは絶対に避けなければなりません。
障害者の相続手続きを障害者福祉の現場経験のある専門家に頼んだ場合
障害者の相続手続きを障害者福祉の現場経験のある専門家に頼んだ場合、どのように話を進めていくことになるでしょうか。
ここでは、福祉現場での勤務経験の長かった私が担当する場合を想定してみます。
障害者の相続手続きのポイントは「障害の程度や状態」!
まず、相続人に障害を持った方がいるご家族から相談を受けた場合、その障害の程度について聞き取りを行います。
知的障害なのか精神障害なのか、診断名は何か、障害手帳の等級は何か、コミュニケーションの程度はどのくらいか、どのような福祉サービスを利用しているのかなど、自分の中でだいたいのイメージができるまでご家族から聞かせていただきます。
まず、これらのポイントを聞かないと本当に成年後見制度の利用が必要なのかどうかの見当がつかないからです。
福祉現場の経験が無い専門家の場合、これらのポイントがどれほど重要なのかは分からないでしょうし、これらのポイントを聞いてもうまくイメージを作ることが難しいかもしれません。
自分の中でおおよそのイメージができたところで、いくつかの選択肢を提案させていただきます。「こうだからこれしかない」ということは決して言いません。どのような状況であろうと選択肢は一つではないからです。
「成年後見人をつけるしか無いって言われて…」と相談に来られた場合でも、私は他の選択肢についてお話します。もちろんどういった方法を取るかを考えていただくのは相続人の方達なのですが、少しでも可能性を広げるために、考えられる選択肢を提案することに努めています。
障害者の相続手続では相続人である家族の希望も重要な要素となる
さらに、私が相談を受ける場合、家族の希望も重要な要素となります。
私が考えられる選択肢と家族の希望が一番マッチングする方法を取ることができれば理想的ですが、必ずしもそうできるとは限りません。しかしできるだけ理想に近い方法を取ることが円満な相続に繋がりますので、その点には力を入れて取り組んでいます。
以上、障害者の相続手続きについてお話しましたが、選択肢が一つしかないと言われてしまった方も、当事務所にご相談いただければ、新たな方法が見つかるかもしれません。相談は無料ですのでメールや電話等を活用し、気軽にご連絡ください。