一度成年後見人をつけるとやめられない!【本人に悪影響を及ぼすこともある】

障害者の将来(親なき後問題)

一度成年後見人等がついてしまうといくら被後見人である本人が嫌になってもやめることは難しい

成年後見制度を利用し、意思能力に支障のある本人に対して成年後見人、保佐人、補助人がついた場合、それは本人に対して一生のことになります。

原則、本人が亡くなるまで成年後見人等が外れることはありません

もちろん成年後見人等が本人より先に亡くなってしまう場合もありますが、それでも人の交代があるのみで成年後見人等が外れることはありません。

当事務所では、成年後見人等がついている側である被後見人ご本人からやめたいとご相談が来ることもあります。

ご本人自身は成年後見人等がつく必要が無い、または成年後見人等がついていると不都合であるという理由からですが、ここには非常に難しい問題があります。

もちろん成年後見人等をつけることにはメリットもあるのですが、成年後見人等(特に保佐人や補助人)が本人の生活に支障を及ぼす可能性は非常に高く、それが本人に対して思わぬ悪影響を及ぼしてしまう場合もあるのです。

今回は、成年後見人等が本人に及ぼす影響についてお伝えしたいと思います。

継続的にお金がかかる

例えば、成年後見人等に対する報酬が毎月2万円に決定されたとしましょう。

それは考え方によっては一生支払い続けなければならない債務と考えることができるのです。

本人の障害年金収入が7万円程度だった場合、毎月2万円支払わなければならないこととなると、残りの5万円で生活しなければならなくなります。

「なんで勝手につけられて勝手にお金を取られなきゃいけないの…?」

正直、この想いは痛いほど分かります。

ご本人からの話を聞いている限りではありますが、福祉サービスの契約をしてくれる、お金の管理をしてくれるというだけで全収入の3割に相当する額を支払わなければならないというのは相当の痛手です。

第三者が申立を行った場合、その者が費用(毎月の報酬)を支払うわけではありません。そこも本人が納得できない理由になると思います。

しかし、例えば社会福祉協議会の日常生活自立支援事業を用いることでなんとか補えたとしましょう。

それだけで月あたり15000円以上の節約につながるかもしれません。

日常生活自立支援事業を利用すれば、福祉サービスの契約や金銭管理についての支援をかなり安価で行ってもらえます(収入要件あり)。これは知的障害や精神障害、認知症のある方には大変強みとなるサービスです。

私であればまず日常生活自立支援事業で補うことができるかを第一に考えます。それでも無理な時は成年後見制度の利用を勧めることとなるでしょう。

結婚に支障が出る

知的障害や精神障害がある方でも当然結婚している方はたくさんいらっしゃいます。

結婚とは両名の合意があれば良く、そこに第三者の介入する余地はありません。

もちろん成年後見人等や家庭裁判所であってもそうです。両名の結婚を拒むことはできないのです。

しかし、成年後見人等がついていることは登記されます。さらに結婚をしたところで成年後見人等がやめることはありません。変わらず本人に対して財産管理や身上監護を行ない続けます。

ここには矛盾が生じます。家族が本人をサポートできるのに成年後見人等をつけなければならなくなってしまった場合と同様、新しい家族が本人をサポートできるのに成年後見人等が継続して就任し続ける。そして報酬も支払い続けなければなりません。

「結婚したいから貯金もしたいのにできない。相手には成年後見人等がついていることが分かってしまった。これでもやめられないなんて一体どうすればいいんですか…?」という悲痛な想いをぶつけられたこともあります。それでも私は「(可能性がある方法を提示した上で)成年後見人等を外すことはかなり難しい」としか答えられなかったのです。

成年後見人等にやめてもらえる可能性

成年後見人等を外すための手続きが無いわけではありません。

簡単に言うと、成年後見人は本人の意思能力が回復した時にはやめてもらうことができます

しかし「本人の意思能力が回復した時」を説明するのは知的障害のある方にとっては非常に困難です。

精神障害のある方である場合はいくらか可能性はあります。精神障害の一部は「波」があることが多く、その波が収まる場合も十分考えられるからです。

しかし、知的障害は医学的に「先天性」とされており、基本的には症状の変化はあまり見られないとされています。そのため、「症状の回復」というものが認められることは相当難しいと考えられます。

そのため私は「可能性は無いわけではないけど相当難しいです。」と回答することしかできないのです。

自分自身が望んだことでは無い

成年後見人等の申立が行える者は本人だけではありません。

4親等内の親族や検察官、市町村長なども本人に成年後見人等をつけるよう家庭裁判所に申立を行うことができます。

そのため、本人が成年後見人等をつけることを拒んだとしても家庭裁判所の審判が下ってしまうことは多々あるのです。

「なぜ嫌なのに勝手につけられてしまうの…?」と言う本人の気持ちもわかります。しかしその背景には第三者が成年後見人等の申立をした理由や家庭裁判所が決定をした理由もあると思います。

成年後見人等をつけることは義務ではありません。本人の意思を最大限尊重する必要があります。成年後見人等をつける以外に本人をサポートする方法は無いのかなども考えた上で第三者申立を行うべきだと思います。

第三者は他の方法を優先し、成年後見制度は最終手段と考えるべき

福祉サービス機関や親族などが、本人に対して成年後見人をつけようと考える場合、それは最終手段として考えるべきだと思います。

それ以外の制度で補うことはできないか、家族がサポートすることはできないかをまず第一に検討することが必要です。

もちろん福祉サービス提供者の方の大変さも分かっているので、そこに過分の負担を負えと言うことはできません。どうしてもつけざるを得ない場合だって当然あるのです。

しかし成年後見類型以外、保佐相当や補助相当である場合は特に注意が必要です。一生報酬の支払い義務が続くこと、一度ついたら二度とやめることができないこと、その他生活に不自由が出る可能性があることをしっかりと説明し、納得をしてもらった上で成年後見制度の申立を行うようにしていただければ幸いに思います。

成年後見制度を利用する前にぜひ一度ご相談を!新たな方法をご提案できるかもしれません!
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