知的障害者が相続人に含まれる場合の留意点と対策【成年後見を考える前に】

知的障害者のいる相続を語り合う 成年後見人をつけない相続

知的障害者の含まれる相続の留意点と対策【成年後見制度の利用を考える前に】

相続人の中に知的障害や精神障害を持った方、認知症を患っている方などがいた場合は注意が必要です。

トラブルなども無く、また遺言も残されていない場合には、一般的に相続は遺産分割協議を行い、相続人それぞれの相続分を決定します。

ということは、遺産分割が行えない場合は相続の手続き自体が困難を極めるわけです。

今回は、相続人の中に知的障害者や精神障害者等がいた場合の相続手続きの注意点をお伝えします。

意思能力の有無と成年後見制度利用の判断

意思能力の無い者はそもそも遺産分割協議を行うことができません。

ここが大きな問題点となります。

意思能力が無い者が遺産分割協議を行うにあたっては、成年後見人等が必要となります。成年後見人が意思能力の無い者に代わって遺産分割協議を行うのです。

では、相続人の中に知的障害者や精神障害者がいた場合、意思能力は無しと判断されてしまうのか。

当然に意思能力無しとみなされることはありません。障害をお持ちの方も、個別に判断されます。

例えば障害の程度が軽度で、十分コミュニケーションを取ることが可能な方は意思能力有りと判断されるでしょうし、認知症であっても軽度のものでしたら十分遺産分割に対応できる可能性はあると考えます。

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私の知り合いに、手帳では重度の知的障害者判定がされている方がいます。しかし、その方は多少失語の傾向はあってもしっかりと意図したことを話せますし、計算もできるし簡単なワードやエクセル処理も行えます。一人で交通機関を利用して外出もできますし、仕事にもついています。

こういった方であれば意思能力は確実にあると言えるでしょう。

では、どの程度が意思能力無しとされるのか。

それは一概には言えません。特に意思能力の有無を判断するためだけの公的な制度はないのです。

成年後見制度を利用する場合、その審査過程の中で意思能力の有無や程度が判断されることはあるでしょう。

意思能力の不足に応じた「補助」や「保佐」という制度もあるため、審判によって意思能力の有無や程度が認められたと考えることもできます。

しかし、ある家庭で相続が起こった場合に相続人の中に知的障害者や精神障害者がいた際に、その判断のためだけに成年後見人の申し出を行うことができるでしょうか?

それは現実的ではありません。家庭裁判所の審査には費用もかかりますし、月日もかかります。意思能力のある無しの判断が欲しいためだけに成年後見制度を申請することは得策ではありません。

意思能力の有無はなぜ必要?

相続を行う場合に相続人の知的障害者や精神障害者の意思能力の有無を判断することはなぜ必要なのでしょうか?

それは、遺産分割協議の「有効・無効」の判断につながるからです。

意思能力の無い者が遺産分割協議を行えば、その遺産分割協議は無効なのですから、その協議どおりにした遺産分割も当然無効となります。

そんなことになれば家庭はパニックです。行った遺産分割を元に戻すことは容易ではありません。不動産登記のやり直しなどでは過分な費用もかかります。

そうならないように有効な遺産分割を行う必要があるわけです。

遺産分割協議の無効は裁判等で判断される

では、遺産分割協議の無効はどのような場面で判断されるのでしょう。

一般的には遺産分割協議無効確認の訴えで判断されることになるでしょう。

遺産分割協議の無効を争う訴訟ですから、審理過程の中での相続人の意思能力の有無は重要なポイントとなります。むしろほぼその点に集約されるでしょう。

では、逆に遺産分割協議無効確認の訴えを提起されることがなかったらどうでしょう。

特に相続人の意思能力の有無の判断が必要になることはありません。

「それなら遺産分割が終わればもう大丈夫だな。」と考えてしまうかもしれませんが、そんなこともないのです。

遺産分割協議無効確認の訴えは、「いつでも」提起できるという点がポイントです。

例えば遺産分割協議が無事終了し、遺産の分割も済んで平穏に暮らしていたとしましょう。

そこから10年経った後に、誰かによって遺産分割協議無効確認の訴えが提起されてしまうこともあるわけです。

その不安を抱きながら生活をしていくのもすっきりとしないものがあると思いますそのため、意思能力の有無が明確に判断できないような微妙な案件の相続であった場合は万が一のための備えが必要となります。

相続で成年後見人をつけたくないのであればできる限り「遺言」を!

有効な遺言があればそもそも成年後見人をつけずに相続をすることが可能でしょう。

意思能力に問題のある者が相続人にいる場合に、その者以外を遺言執行者とすれば良いからです。

しかしこのことを知らない方が多くいらっしゃるため「手遅れ相続」となってしまうパターンが多いのです。

成年後見人をつけたくないのであれば、できる限り遺言を残しておきましょう。

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障害に理解のある専門家であれば、まずは対象となる知的障害者の方の障害の程度や判断能力などを細かく聞き取ろうとするでしょう。また、そういった専門家であれば知的障害者や精神障害者が相続人に含まれる場合の相続について、色々な対処方法を持っているでしょう。さらに、若年期に成年後見人をつけることのデメリットまで教えてくれるはずです。

知的障害や精神障害をお持ちの方や認知症を患っている方の相続を相談する場合は、そういった目線で検討を行うことも必要となりますので覚えておいていただくとありがたいです。

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