認知症の相続のポイント5つ!【年齢・症状・署名・家族の理解・遺産分割内容】

成年後見人をつけない相続

認知症の方が相続人に含まれる相続のポイントとは?

認知症があっても一定の場合には遺産分割協議が可能です。

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遺産分割協議が可能であるということは一般的な相続と同様に遺産の分割ができるということです。

ということは成年後見人を選任しなくても良いということになりますが、そのためにはクリアしなければならないハードルがいくつかあります

今回は認知症の方が相続人に含まれる場合の相続手続きのポイントについて解説したいと思います。

認知症の症状

まず最も重要なポイントの一つとなるのが対象の方の「認知症の症状」、認知症状についてです。

相続人の中に認知症の方がいる場合、その認知症の方の症状によって成年後見人をつけるかつけないかが決まると言っても過言ではありません

私の経験上ですが、「軽度」に関しては多くの方が遺産分割協議が可能であり、「中度」、「重度」と進むことによって有効な遺産分割協議を行うことが難しくなります。

すでにかかりつけ医の診断を受けている場合であれば分かっていると思いますが、家族でも行える長谷川式検査というものでおおよその判定をすることも可能です。

ただし、長谷川式検査はあくまでも「記憶」に関する検査が主であるため、検査の結果が悪くても、本人が元々相続関連の知識があることによって有効な遺産分割協議が行えるという可能性も出てきます。

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認知症高齢者の年齢

認知症高齢者の年齢がポイントとなるのは「銀行」に対してです。

極端な例を上げると、100歳を超えている高齢者が相続人に含まれている場合などは、銀行から認知症の有無についての医師の診断書を求められる可能性があります

銀行の受付で成年後見人が必要と言われる

銀行としてもかなりの高齢の場合は意思能力の有無が気になるところでしょうから、仕方のないことではあります。

その場合は下記の記事を参照するなどして対応すると良いでしょう。

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認知症の方が署名をすることができるか

認知症の方が署名をできるかできないかで遺産分割協議書が作れるか作れないかが決まります

なぜなら、遺産分割協議書に署名ができないと遺産分割協議書自体が作れないからです。

いくら意思能力に支障がなくても自分の名前を漢字で正確に書くことが出来なければ銀行等の遺産分割協議書提出先では認めてくれません。

なお、疾患や障害により指が無いなどの理由がある場合は別途方法があります。

家族の理解

遺産分割協議を行うための意思能力について、曖昧な場合は家族の理解が非常に大きなポイントとなります。

意思能力の有無は成年後見人の申立や訴訟にならない限り正確にははっきりしません。

ということは、いくら銀行等が本人の意思能力を認めたとしても、家族内で「成年後見人をつけて遺産分割協議を行うべきだ」という者がいる場合、遺産分割協議を確定させることができません

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この場合の仕組みは以下の通りとなります。

①作成された遺産分割協議書により全ての遺産分割手続きが終了した。

②相続人の一人が相続人の中に意思能力に欠ける者がいたから遺産分割協議書は無効だと主張した。

③その相続人により遺産分割協議の無効確認訴訟が提起された。

上記の流れになると、判決が出るまでは遺産分割が有効だったのか無効だったのかがはっきりしません。

しかも遺産分割協議の無効はいつまでに主張しなければならないという期限もありません

万が一「のちに遺産分割協議が無効と判断されてしまった場合は遺産分割協議のやり直しをしなければならない」というリスクを抱えたまま家族全員が過ごさなければならなくなってしまうのです。

そのため家族間の認識を統一させることは非常に重要になります。家族でトラブルが起こりそうな場合は反対に成年後見人を選任してしまった方が安全でしょう

認知症の方を含めた遺産分割内容

認知症の相続では遺産分割内容も非常に重要です。

もちろん遺産分割協議は相続人間で自由に内容を決めて良いのですが、成年後見人の問題が絡むとある程度定型化されます。

それは「認知症の方になるべく財産を残さないこと」です。

理由としては認知症の方に財産を残すと、実質凍結された状態になってしまうことがあるからです。

この先認知症状が進み、自分で財産を運用することができなくなってしまうと、その財産は事実上凍結された状態になります。

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施設入所や入院などにかかるお金を認知症の方本人に渡してしまうと、本人のためなのに使用することができないというおかしな状態になります。

本人の預貯金や有価証券、不動産の持分などがあっても誰も手をつけることができなくなり、結局成年後見人を選任することになってしまうこともあります

知的障害者には成年後見人をつけるのが一般的

そのため、基本的には「本人の財産は家族が持つ」というのが良いでしょう。

もちろん家族の財産に余裕があったり、配偶者控除を使わないと相続税が過分にかかったりなどの理由がある場合はこの限りではありません。あくまでも「本人のお金を本人のために使う必要があるのに使えなくなる」といった状況を回避するための考え方となります。

認知症の相続は考えなければいけないことがたくさんある!

以上、認知症の相続についてのポイントを5つお話しましたが、認知症の方が相続人に含まれる場合、問題点がいくつもあります。

一番大きな点としては「成年後見人をつけずに相続手続きが行えるか」というところでしょう。

また認知症の症状が悪化する前に他のご家族が遺言書を作成することによって最悪の状況を回避できる可能性があります。認知症は人それぞれで進行の速度が違うため、思わぬ悪化により家族全員が露頭に迷うという危険性を早めに回避しましょう。

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当事務所では、認知症の方が相続人に含まれる場合の相続手続きや遺言などの対策についてのサポートを行っております。お困りの方はまずは当事務所にご相談ください。

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