認知症や障害者が含まれる相続は一般の相続手続きと大きく違う
一般的な相続手続きと、認知症や障害者が含まれる相続手続きは内容が大きく違うことが多々あります。
一般的な相続手続きは、
(遺言が無い場合)
①戸籍を集めて相続人を確定する
②相続財産とその価値を調べる
③遺産分割協議の内容を元に遺産分割協議書を作成する
④遺産分割協議書の内容通り財産を移転する
となります。認知症や障害者の相続手続きの根本はこれと変わりませんが、これらの手続きに付加して必要な事項が加えられるのです。
今回は、一般的な相続手続きと比べ、認知症や障害者の相続手続きで考慮しなければならない事項についてお伝えしたいと思います。
認知症や障害者の相続手続きで考慮しなければならないこと
認知症や障害者の相続手続きでは、一般的な相続手続きに加えて考慮しなければならないことが多くありますが、それらについて詳細に述べている書籍やインターネットの情報はほとんどありません。
これらを考慮するにあたっては、福祉現場の知識や経験と相続手続きの知識や経験の両方を兼ね備えていなければならないからです。
実際に福祉現場及び相続手続きの知識と経験の両方を兼ね備えている者というのは全国的にみてもかなりの少数です。
そのため、「本人と家族がそのしわ寄せを受ける」ということになっているのが現状です。
これらの知識は大変高度で専門的であり、なおかつ前例というのが大変少ないため、取り扱える者が少ないというのは仕方のないことだと思います。
以下に考慮しなければならない事項をいくつか挙げていきたいと思いますのでよろしければご参考になさってください。
認知症や障害者だけど遺産分割協議ってやっても良いの?
これについては、ほとんどの専門家や銀行等の機関が「駄目です。成年後見人をつけてから遺産分割協議を行ってください。」と口を揃えて言うことと思います。
しかし実際はそんなに簡単に決められることではありません。
なぜなら、全体的に見ると「認知症や障害者が遺産分割協議を行えるケース」の方が多いくらいだからです。
例えば、「身体障害者」の人でその他の種類の障害を併せ持っていない場合、判断能力に関してはほとんどの人が問題ないでしょう。
また、「精神障害者」であっても遺産分割協議を可能とする判断能力がある者がほとんどです。なぜなら、精神障害は「波」がある症状を持つ場合が多いからです。
これだけでも単に「障害者」ということを聞いただけで成年後見の申立を考えるには安直すぎると言うのがお分かりでしょう。
また、認知症については長谷川式検査などにより、「軽度」、「中度」、「高度」などに分類されます。軽度の認知症の方の中には判断能力が十分にあり、遺産分割協議を行える方もたくさんいらっしゃいます。
そして「知的障害者」についても療育手帳の「重度(マルA含む)」、「中度」、「軽度」の分類では半分以上が、「中度または軽度」に分布します。軽度〜中度の知的障害者の方の中には遺産分割協議を行える判断能力がある方もたくさんいらっしゃいます。
ということは、まず「認知症や障害者だから」ということは切り離して、「遺産分割協議ができる程度の判断能力があるか否か」を見定める必要があるということです。
これらの知識はいくら相続手続きを長く行っているからといって身につくものではありません。実際に認知症や障害を持つ方と過ごし、支援してきた経験が無いと難しいでしょう。
認知症や障害者の場合ではどのように遺産を分ければ良いの?
これも一般的な遺産の分配方法とは大きく変わります。
遺産分割協議を行ったり、遺言を作成したりする際には「遺産をどう分配するか」というのが非常に重要となってきます。
なぜなら、家族の将来までを考えた上で分割内容を決めなければならないからです。
認知症の方が含まれる場合であれば、その方の症状が進行することまで考えなければなりませんし、障害者の方であれば、その障害が将来の財産運用にどのように影響するかまで考える必要があります。
「今回の相続手続きが無事に終わればそれで良い」というわけではないのです。
そのため、専門家には認知症がどういったものなのか、障害がどういったものなのかといった知識が無ければご家族により良いご提案はできないでしょう。
認知症や障害者の相続は福祉の現場経験や知識のある専門家へ!
以上、認知症や障害のある方が含まれる相続について考えなければならない事項について例示させていただきましたが、このような相続手続きを行う場合、必ずと言ってよいほど福祉に関する知識が必要となります。
逆に言えば福祉的観点を考慮せずに形式通りに相続手続きを行ってしまった場合、将来的に問題を引き起こしかねません。
当事務所では、福祉の現場経験が豊富な行政書士が相続手続きを支援させていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。