相続で障害者にどのように財産を残せば良いのか?【親なきあとの遺産相続】

障害者の将来(親なき後問題)

相続で障害者にどのように財産を残すのかを考える

相続で障害のある方にどのように財産を残せば良いのかについては、ご相談も多く、大変難しい問題だと思います。

一般の相続とは違い、色々な点を考えた上で結論を出さなければなりません。

家族構成、障害の程度、財産の種類や量などにより、ベストな財産移転の計画は大きく変わります。

今回は、典型例を挙げ、検討しなければならない点とその対策方法について解説します。

一般的な家族構成モデルからパターンごとに解説

父、母、長女、次女の4人家族。長女に知的障害がある

今回は上記のモデルを元に、注意点と対策を考えていきます。

障害により意思能力が無い場合→成年後見人をつけて法定相続を行う

まず、障害により意思能力が無い場合、一般的には成年後見人をつけて相続手続きを行わなければなりません。

この場合、成年後見人は本人のために「法定相続分以上」の財産を確保する要請があります。

そのため、不動産が共有状態になってしまう、使えないお金を多額に保有してしまう、などの困った結果に陥ってしまうこともあります

後述しますが、こういった場合は遺言により、成年後見人をつけずに相続を行える可能性があります。意思能力の無い相続人がいる場合には遺言を準備しておくことが必須となります

意思能力があり遺産分割協議ができる場合

では、障害があっても意思能力があり、遺産分割協議を行える場合ではどうでしょう。

よくあるパターンを挙げて解説していきます。

障害のある子が将来施設生活を送る予定である場合

障害のある子(ここでは長女)がすでに施設に入所していたり、親なきあとに施設へ入所することを予定していたりする場合は、成年後見人等をつけずに過ごすことができるかもしれません。

もちろん色々な要因により、成年後見人を必ずつけなくても良いとは言えませんが、親2人が亡くなった後も、次女が施設と契約手続きを行っていくだけで、それほど負担なく長女をみていくことができる可能性は高いと思います。

その場合、はっきり言ってしまうと長女は「財産を使いたくても使えない状態」になります。

障害年金で概ねの生活費は賄え、施設では集団生活を送るため、大きな出費というのは基本的には考えられません。

そのため、大きな財産を持っていても、施設にいる限りは使うことは無いでしょう。

ということは、相続で多額の財産を手に入れたとしても、事実上財産は凍結された状態となります。

そしてそのまま本人が亡くなれば次女へ(亡くなっていれば次女の子)、相続人がいなければ国へ財産が渡ることになります

障害のある相続人にお金を渡さないという方法もOK

障害のある相続人に、法定相続分より少ない財産を渡すことまたは相続財産を渡さないこと(0円にする)、どちらの方法を取ってもOKです

遺産分割協議は契約行為であるので、その内容は契約者(相続人)同士の自由です。

しかし、互いに納得し、障害のある子の生活はしっかり生涯まで約束する必要があります。

障害者に渡すお金は0にしたいけど障害者控除は使いたいという場合

相続税の障害者控除は、他の相続税の控除制度に比べると使い勝手が良く、また効果も大きいことが多いです。

障害者を使うことにより、相続税額自体が0円になるだけでなく、相続税の申告自体が不要となる方もいます

しかし障害者控除は、障害者本人が相続財産を譲り受けないと使うことができません。その他にも気を付けなければならない点もあるため、専門家に相談することをおすすめします。

当事務所では、障害者の相続の経験のある税理士と連携しておりますので、障害者控除を適用した相続手続きが可能です。

親がすでに障害者に対して多額の貯金をしてしまっている場合

親としては、障害のある子に対しては障害の無い子よりも多くの心配をしていることが多いです。

そのため、親が障害のある子の預金通帳を作って多額のお金を入金していたり、子に支給されている障害年金を下ろさずに貯めておいてある場合も多いでしょう。

しかし、これは相続手続きの際に困ってしまうことになります。

例えば相続税の計算では、親が子のために貯めていた貯金は「名義預金」とみなされることがあり、通帳の残高に使った形跡がなければ、なおそのようにみなされてしまう可能性が高くなるでしょう。

本人の口座から家族が出金する

また、税務上は名義預金とみなされても、相続手続きの際に銀行に「名義預金だから相続財産に戻して」と言っても受け入れてくれません

親が入金したお金でも、銀行にとってはあくまでも子ども名義の通帳であるため、勝手に引き出すことを許してはくれないでしょう。

そのため、親の財産として相続税の計算をされてしまうけど、親の財産として自由に処分(遺産分割)することもできないという困った状況に陥るわけです

障害のある子に相続させたことにすることは可能

このような場合、もはやそのお金(預金)はどうすることもできませんが、遺産分割協議により、親の財産として子に渡したことにするという処理は可能です

そのようにすれば、障害のある子としても相続財産をもらったことになりますし、障害者控除も適用することができます。

そのような処理をする場合には、遺産分割協議書にそのことを確認する文章を入れ、税務署にも納得してもらうようにしましょう

相続財産の大部分を占めているのが不動産である場合

相続財産は、不動産や動産もお金に換算して総額を計算します。

そのため、不動産が相続財産の大部分を占めるということもあると思います。

例えば、不動産の価値が3500万円、預金が500万円という相続財産内訳だった場合で相続人が母と長女(障害あり)と次女だった場合、法定相続分は母が2000万円相当、長女が1000万円相当、次女が1000万円相当となります。

この場合、長女に渡す現金が足りないからといって、不動産の持分を共有させることはなるべく避けたほうが良いと思います

不動産を共有すると、障害のある者の持分が簡単に処分できないことがあります。意思能力が無い者であればなおさらです。

そうなると、その家に誰も住むことがなくなったとしても売却できないままそのままにしておくことになってしまいます

上記の例であれば、母と次女で不動産を共有し、長女にはなんとか現金を多く渡すという形にしたほうが、後々の不動産の処分には困らないでしょう。

成年後見人がついた場合には原則法定相続分で分けなければならないため、上記の方法で納得してもらえるよう協議を進めましょう。

法定相続分による登記は危険!?

成年後見人をつけたくないからといって、安直に法定相続分による登記を行おうとするのは考えものです。

意思能力の無い者が相続人である場合、不動産を法定相続分の割合で共有登記するには、相続人の一人の申し出で行うことができるとされています。

「成年後見人をつけなくて良いならそうしよう」と軽く考えて共有登記をしてしまうと、先程述べた処分に困るという自体になってしまい、成年後見人をつけたときよりも金銭面で損をしてしまう可能性もあります。

やむを得ない場合も、どちらが家族にとってベターなのかを慎重に検討する必要があると思います。

障害者の相続はケースごとに全く違うが遺言でほとんど解決できる!

以上、障害者の相続についての注意点と対策について解説しました。

冒頭で述べたように、障害者の相続とひとえに片付けることはできず、色々な要素が問題となり得ます。

しかし、被相続人(亡くなった人)が適切な遺言さえ残していれば解決できることがほとんどであるとも言えます

逆に言えば、適切な遺言を残していないことで、障害者の相続手続きについて窮してしまうご家族が多いのです。

どのような遺言を残せば良いのかについてもケースごとに異なりますので、突然の相続で困りたくないという方は、ぜひ一度ご相談ください。

親なき後の資産計画カウンセリング

当事務所では「親なき後の資産計画カウンセリング」も行っております(有料)。

障害のある子の年齢、将来の予定、家族構成、家族の希望、財産の種類等を元に、資産形成が無駄になることのないようアドバイスを行います。

身近にいるファイナンシャルプランナーや銀行などは「障害者のいる家族」の正しい資産運用にはあまり詳しくないため、教えてもらえる機関を探すのはなかなか大変です。

子が若いうちから間違った資産形成をしてしまうと致命的になります。できるだけ早めに正しい財産の確保を計画しましょう。

※親なき後の資産計画カウンセリングは面談、リモート、メール、お電話にて承りますが、どの方法でも有料とさせていただいております。ご希望の方は、まずはお問い合わせください。

成年後見制度を利用する前にぜひ一度ご相談を!新たな方法をご提案できるかもしれません!
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