「兄弟」が絡むケースでは相続に影響が出やすい!
障害者や認知症が関わる相続の場合には「兄弟」がポイントとなる場合が多くあります。
逆を言えば、兄弟がいなければ問題にならなかったが、兄弟がいることによって講じなくてはならない対策が発生するということです。
今回は相談者が多く、典型的である2例の兄弟絡みの手遅れ相続についてご紹介します。
※ここでの障害は意思能力に支障がある程度の障害と設定します。
片方の兄弟に障害があることによってもう片方の兄弟が追い込まれてしまう例【ケース①】
このケースは致命的な手遅れ相続の典型例として、多くの方からご相談をお受けします。
【ケース】
父、母、兄、弟(障害)の4人家族。父が病気のため死亡した。遺言は残していない。
この場合、弟の障害が意思能力に支障がある程度であれば、弟に成年後見人をつけて相続手続きを行う必要があります。
「兄弟」の有無で大きな違いが発生するのが「成年後見人をつける期間」です。
仮に最初から弟がいなかった場合(一人っ子であった場合)でその子に障害があった場合、父の死後、母が亡くなった際に成年後見人をつける必要が出てくるでしょう(子をみる家族がいなくなるため)。
そして今回のケースの場合、兄が弟をみていくことができるのであれば、兄が亡くなるまで成年後見人をつける必要は無くなるかもしれません。
そうなると、相続手続きの際に成年後見人をつけずにおければ、かなりの期間の違いが出てきます。
障害のある子がいるのに何の対策も取っていないがために、早くから成年後見人をつけなければならなくなるご家庭は多くあります。
成年後見人をつけずに兄弟がみていくことができる期間を丸々損してしまう形となってしまうのです。
また、今回のケースでは、相続の際に不動産を共有しなければならないリスクも出てきます。
一旦不動産を共有してしまった場合、基本的には弟が亡くなるまで共有状態は解けません。共有状態を解くためには多額の現金が必要となったり、成年後見人を説得しなければならなくなってしまうからです。
そうなると、親が亡くなったあと残された兄弟達は大変困ることになってしまうのです。
親世代の兄弟の影響により成年後見人をつけなくてはならなくなってしまった場合【ケース②】
次は親世代に兄弟がいる場合に陥る可能性のあるケースです。
【ケース】
父、母、子(障害)の3人家族。父が死亡したが、生前に遺言を残していたため、子には成年後見人をつけずにいられている。
その後、父の兄が死亡した。父の兄は結婚していたが、子がいなかった。そのため相続人は父の兄の配偶者と父の子(障害)の2人となった。
父の兄は遺言を残していないため、成年後見人をつけなければ相続手続きができないと専門家に言われ、子に成年後見人をつけて相続手続きを行った。
自分の家族だけ対策をしていても思わぬ落とし穴がある
自分たち親の世代が遺言を残しておき、子に成年後見人をつけるタイミングを遅らせようと考えていたとしても「兄弟」の存在がそれを絶ってしまうこともあります。
自分たちは対処していたのに、その他の要因があることに気付かなかった悔しい例だと思います。
また、自分たち家族の思いをその他の親族が理解できないことはあります。
「成年後見人つけて相続すれば良いだけでしょ?」と手続き自体を軽く考えられてしまうこともあるでしょう。
障害のある方がいる家庭では、親族の家族関係まで把握して置かなければならないという厳しい立場にあるのです。
今回のケースも、父に兄弟がいなければ起きなかった問題といえます。
兄弟の認知症にも注意!
ちなみに上記のケースを、子に障害がなく、父の兄の配偶者に認知症があったというケースに置き換えてみましょう。
この場合も相続人は、子と父の兄の配偶者の2名となります。
もちろん障害の無い子には成年後見人をつける必要はありませんが、認知症のある父の兄の配偶者に成年後見人をつける手続きが必要となってきます。
となると、予期せぬ親族の兄弟の影響で、成年後見人を申し立てる手続きを子自身が行わなければならなくなるという結論になります。
「兄弟」が関係する相続には注意!
以上、兄弟が影響を及ぼしてしまうケースについてご紹介しました。
障害のある方がいるご家庭では、兄弟の有無により思わぬ影響が出てしまうことが多くあります。
今回の全てのケースでは「遺言」があることによって問題を回避したり、影響を小さくしたりすることができたでしょう。
ケース①では「親が相互に遺言を残しておくこと」、ケース②では「親の兄弟に遺言を残してもらうこと」、が必要になります。
障害者(意思能力に支障がある)のいる家庭では、遺言は「絶対」です。遺言を準備していないことで残された家族が苦労してしまうということをよく認識しておきましょう。
当事務所では、家族や親族のケースに合わせた対処方法をご提案しております。遺言は家族の設定や障害、認知症の症状等によってそれぞれ内容が異なります。遺言をご検討の方は、下記のフォームからお気軽にご相談をいただければと思います。