親が離婚をしている場合の親亡き後問題は深刻!?
親が離婚している場合の親亡き後問題とは「子に障害があり親が離婚をしている状態」であり、「子と共に住んでいない方の親が亡くなった時」に生じうる問題をいいます。
離婚しているご夫婦は多いかと思いますが、子に障害がない場合にはこの問題は起こりえません。
今回はこの特有なケースにのみ起こる問題について解説していきたいと思います。
相続で重大な問題が起こり得るケース
母(58歳)と子2人(長男35歳・次男30歳)の3人で暮らしている家族。
20年前父と母は離婚し、それ以来連絡を取っていません。
次男には重度の知的障害があり、入所施設で生活をしていました。成年後見人は就いていません。
ある日、知らない女性から母の元へ電話がありました。
「父が亡くなりました。あなたのお子さん達と相続手続きがしたいのですが…。」
連絡をしてきたのは離婚した後に生まれた父の子です。
長男と次男は父の相続人にあたるので、父の財産を相続するには2人も遺産分割協議に参加しなければなりません。
しかし次男には重度の知的障害があり、字を書くことができません。
結果、次男に成年後見人をつけなければ相続手続きができなくなってしまうのです。
借金があっても相続放棄ができない!
以前にも触れましたが、元配偶者が債務超過の状態で亡くなった場合、相続放棄について問題が生じます。
先ほどのケースで父が亡くなり多額の借金があることが判明した場合です。
父側の再婚相手や子は単独で相続放棄ができます。
また長男についても相続放棄ができます。
しかし次男が相続放棄を行うには成年後見人をつけなければなりません。
成年後見人をつけた上で家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければならないのです。
意志能力が無いという前提にはなりますので、必ずしも熟慮期間の三ヶ月以内に成年後見人をつけて相続放棄の手続きを行わなければならないということにはなりませんが、債権者からはすぐに請求を受け、手続きを催促されることになるでしょう。
最強の親亡き後対策「遺言」でも対応できない問題
親が遺言を作ることが最強の親亡き後対策の一つではありますが、今回の問題は現在共に生活している親だけが遺言を作っていても対応できません。
離婚した配偶者も遺言を作っていなければ結局は成年後見人をつけることになってしまうからです。
常に連絡を取り合っていれば良いのですが、互いに新しい家族を持つこととなった場合などは連絡が途切れてしまうこともあるでしょう。
その場合、突然の訃報により生活が激変してしまうリスクがあるのです。
これといった対策は無いが…
この問題を回避するには、元配偶者にも遺言を作ってもらうことしかありません。
理想としては離婚をする前に遺言を作っておいてもらいたいところですが、それもなかなか難しい状況があるでしょう。
財産の多少に関わらず、子に成年後見人をつけないために遺言を作ってもらいたいという意志をしっかりと伝えましょう。
母子の家庭だけでなく、父が新しい家庭を作った場合はそこにまで影響を及ぼすことを理解してもらえれば、遺言作成に前向きになってくれるかもしれません。
他にも類似のケース【叔父・叔母に子がいない】
今回のケースに類似した場面として、「子がいない叔父・叔母がいる」というケースも注意が必要です。
子がいない叔父・叔母は兄弟姉妹が相続人となります。
しかしその兄弟姉妹が亡くなっていた場合、その子が代襲相続人となります。
その子に重度の知的障害があった場合などは、結果的に成年後見人をつけなければ相続手続きができないということになってしまうのです。
こちらのケースについては、叔父・叔母に遺言を作ることを頼みやすいとは思います。
叔父・叔母が高齢にならないうちに遺言の作成をお願いしましょう。
ケースごとの対策は情報が少ない!
今回のように、あまり多くないご家庭のケースについての情報量は圧倒的に少ないです。
そのため、現在危険な状態になっているのにも気付いていない親御さんも多くいらっしゃるでしょう。
当事務所へのご相談も、実際に相続が始まってしまい、どうにもならなくなってしまった時点でのご相談がほとんどです。(その場合はほとんどのケースで成年後見人をつけての手続きしかご案内できません…)
早めに自分の家庭の状況に気付き、対策を検討することが重要です。