知的障害者や認知症が成年後見人をつけざるを得なくなる「手遅れ相続」の事例と対策を紹介!

成年後見人をつけない相続

知的障害者や認知症の人が成年後見人をつけざるを得ない状況に陥ってしまう「手遅れ相続」の事例と対策を紹介

「手遅れ相続」とは何でしょう。

それは、相続をきっかけとして知的障害者や認知症の方に「本来は不要であった成年後見人」をつけざるを得なくなってしまうことです。

当事務所では、この「手遅れ相続」についてのご相談が多く来ております。

しかし、この手遅れ相続状態になってしまうとこちらとしても取れる手段が限られてきます

今回はこの「手遅れ相続」の事例について紹介したいと思います。

手遅れ相続とは?

それではまず「手遅れ相続」とはどのような状態を言うのでしょうか。

先程説明したように知的障害者や認知症の方が本来ならつけなくても良かった成年後見人をつけざるを得なくなってしまうことですが、それはどのような場合に訪れるのかを簡単に解説します。

手遅れ相続の条件

①法定相続人の中に意思能力の無い者がいる

②遺言がない

原則的にはこの2点だけで手遅れ相続に陥ります。

遺言がない状態で法定相続人の中に意思能力が無い者がいるだけで原則成年後見人が必要となります。

知的障害者には成年後見人をつけるのが一般的

このことはほとんどの市民が知らないため、手遅れ相続に陥った状態のご家族から多く相談が来てしまうのです。

もちろん全く手が無いわけではありませんが、一部の場合を除きほとんどの場合は成年後見人をつけなければ財産の移転が不可能になります。実際の事例は下記の通りとなります。

実際の「手遅れ相続」の事例(知的障害者の場合)

父・母・長男・次男の4人兄弟。次男には最重度判定の知的障害があります。

上記の状態で父が亡くなりました。遺言はありません。

母と長男は銀行に父の遺産を引き出す手続きをお願いしましたが、手続きには遺産分割協議書が必要だと言われました。

遺産分割協議書が無効になる

しかし遺産分割協議書には次男の署名が必要です。次男が署名できないことを銀行に伝えると「成年後見人をつけてください」と言われてしまいました

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実際の「手遅れ相続」の事例(認知症の場合)

父・母・長女の3人家族。母には重度の認知症があります。

この状態で父が亡くなりました。遺言はありません。

長女は銀行に口座を解約する申出をしましたが、遺産分割協議書または銀行所定の解約申入れ書に法定相続人全員の署名が必要であると言われました。

母は会話もできず自分の名前を書くこともできません。それを銀行に伝えると「それなら成年後見人をつけないと口座のお金は下ろせません」と言われてしまいました

手遅れ相続は遺言一つで全て解決!

上記の2例の場合、遺言さえあれば成年後見人をつけることを回避できたはずです。しかし当事者はそんなことは知りません。

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なぜなら世の中にそのようなアナウンスはほとんどされていないからです。

また実際に相続の場面に直面するまでそのようなことは考えもしないはずです。そのためほとんどの方が遺言を残していないのです。

私も講演などの場面では「必ず遺言は残すこと」という注意喚起をしていますが、その注意喚起を行える範囲には限界があります。

悲しいかな当事務所にご相談に来た方に「残念ながらもう成年後見人をつけるしか手はありません…」と回答するしか無くなってしまう状態からこの「手遅れ相続」という名前をつけたのです。

手遅れ相続を回避できる例外

手遅れ相続を回避できる例外もいくつかありますがそれはかなり限られています。

例示すると、

①遺産が不動産しかない場合

②次の相続まで期間が空かない場合

③そもそも意思能力がある場合

のような状況です。

①遺産が不動産しかない場合

預貯金や有価証券が無く、不動産のみが遺産となる場合、法定相続分で不動産の名義変更が行なえます

ただし、この場合でもあくまで「法定相続分」での登記しか行なえません。

この場合、意思能力の無い者が不動産の名義を取得してしまうため、売却は困難となります。

②対象の相続人が亡くなるまで期間が空かない場合

知的障害や認知症のある者が危篤状態である場合など、意思能力の無い者が亡くなるまでの期間が短い場合には一次的な相続手続きを放置しておくことが可能です。

その場合、意思能力の無い者が亡くなってからまとめて相続手続きを行うことになります。

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③そもそも意思能力がある場合

この場合に当てはまるケースは比較的よくあります

「銀行や他の専門家に成年後見人をつけるしかありませんと言われた」という相談があっても、実際に意思能力が確認でき、遺産分割協議書を作成できたというケースも経験上多々あります

福祉現場での経験があり、対象者の状況を見極められる専門家に相談することが良いでしょう。

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手遅れ相続とならない場面は非常に限られている!

以上のように、遺言無しで手遅れ相続を回避できる場面は非常に限られています。

しかし逆を返せば「遺言さえあれば手遅れ相続を回避できる」ということです。

ただし遺言の内容によっては全く無駄に終わってしまう例もありますので、成年後見人をつけずに相続手続きが行える内容の遺言を作成することが必要です。

当事務所では、手遅れ相続の判断や手遅れ相続にならない遺言作成のサポートを行っていますのでお困りの方はぜひ一度ご相談ください。

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