片方の親が認知症になった時は必ずもう片方の親に遺言を書いてもらおう
親が認知症になった場合、まず何をするべきか。
もちろん福祉サービスの利用を検討したり、本人を支援する体制を整えたりすることは重要です。
しかし、「本人を含めた家族が困らないための対策」としては別のことが必要となります。
それは、「認知症となってしまった親のもう片方の親に遺言書を書いてもらうこと」です。例えば母親が認知症になったら父親にという風にですね。
相続財産がどんなに少なかろうと、相続人間で全く揉めることがなかろうと、遺言が必要になります。
それはなぜかというと、「成年後見人の問題」が出てくるからです。
母親が重度の認知症となり判断能力が無いとされてしまった場合、その状態で父が亡くなると、成年後見人を求められることになります。
相続財産が少なかろうと、家族間で揉めることがなかろうと、銀行から遺産を移転したり、不動産の名義を変えたりする場合に成年後見人を求められてしまうのです。
当事務所では、このことについてのご相談が多くあります。
もちろん、すでに相続が発生してしまっているとどうすることもできない「手遅れ相続」となる可能性が高いです。そのため、事前の対策として遺言を準備しておくようアナウンスに努めています。
なぜ認知症の家族のために遺言が有効か
それではなぜ遺言があると認知症の相続人に成年後見人をつけなくても良いことになるのか。例を挙げてみます。
上記の例の続きとして、父と母、子2人の4人家族であった場合、父が亡くなると相続人は重度の認知症がある母、子二人の計三人となります。
母は重度の認知症であるため、子二人が相続手続きを行うこととなります。
その際、父が遺言を残していなかったとなると、一切の財産を移転させることは出来ません。
母に判断能力がないため、相続手続きに必要な遺産分割協議ができないからです。
となると、銀行や法務局から言われることは「成年後見人をつけてから遺産分割協議をしてください」ということです。
成年後見人の申立をして、就任した成年後見人とその他の家族で遺産分割協議を行うことを指示されます。
成年後見人は相続手続きの後も本人を代理する
しかし、成年後見人は遺産分割協議をした後も変わらず本人の成年後見人となり続けます。一度就任すると辞めさせることはできないのです。
成年後見人の申立には20万円程度、そして毎月成年後見報酬と2万〜3万円を支払い続けることになります。
高齢の認知症者であってもお身体がお元気であれば、長く生きることには全く関係がありません。そのため、家族が本人を看ることができても成年後見報酬として数百万円〜支払うことになることも十分考えられます。
親に遺言を残してもらえれば遺産分割協議は必要なし
上記のケースで父が遺言を残していた場合はどうでしょう。遺言の内容例は以下の通りとします。
①預貯金や有価証券は子2人に相続させる
②不動産は子2人に相続させる
③遺言執行者は長男とする
上記の内容は相続税対策などは考慮しておりませんが、こうしておくと、相続手続きに関して成年後見人は必要ありません。
なぜなら、相続財産の移転手続きに母が関与することはなくなるからです。
その内容が記載された有効な遺言があれば、遺産分割協議書なしで上記の内容を実現することができます(銀行等にもよる)。
ということは、家族が母を看ることができれば成年後見人をつける必要はなくなるというわけです。
遺言は子から親へ頼むべき!?
「遺言を書いてもらいたい」というのは非常識でしょうか?そう思う方は大変多いです。
親に死を連想させるのですから子から頼むのは気が引けるというのも十分理解できます。
しかし私はそうは思いません。なぜなら成年後見人を立てる立てないの問題に直面したご家族をよく知っているからです。
「親は自分で最後までみたい。しかし通帳まで取り上げられて福祉サービスや病院の方針まで成年後見人に決められてしまう。それは嫌だが成年後見人をつけないと財産を受け取れないので大変困る。いったいどうすれば良いのだろう…!」と苦悩されるご家族がほとんどです。
果たして親としては自分の死後に子ども達にそんな苦悩をさせたいと思うでしょうか?
逆に言えば「遺言一つ残しておけば子ども達に大変な思いをさせることはなかったのに…。」と天国で悔やんでいる。そんな親御さんたちを想像してしまいます。
遺言を残すことは親も子も安心。全てにおいて利益しか無い(成年後見人をつけたくない場合)ことです。
そのため、そのメリットについてしっかり説明して遺言を書いてもらうと良いでしょう。
将来まで考えた遺言を親に書いてもらう場合は行政書士花村秋洋事務所へ
遺言の内容については家族や財産の状況により人それぞれ変わります。
特に相続税が関係してくるため、それを踏まえた内容にすることが必要です。
当事務所では、税理士等、他の専門家とも連携して遺言の内容を検討することができるため、家族ごとの将来を踏まえた遺言を残すことができます。
認知症、障害をもった方が相続人に含まれる場合の遺言・相続手続きを専門に取り扱っている当事務所にぜひ一度ご相談ください。
【当事務所では認知症の方への遺言作成サポートを専門的に取り扱っています】