面会謝絶となっている病院や施設でも遺産分割協議書に署名押印はもらえるのか
新型コロナウイルスによる影響で面会謝絶となっている病院や入所施設は多くあります。
そんな中で「家族が入院や入所しているので遺産分割協議書に署名押印がもらえない」といったご相談を受けることが多々あります。
本当に病院や施設は遺産分割協議書への署名押印をさせてくれないのでしょうか。今回はこの点について考察していきたいと思います。
基本的には病院や施設は必要時の面会を認めてくれる
あくまでも一般病棟についての話ですが、病院や施設では必要時の面会は認める傾向にあります。
もちろん集中治療室であったり、時限的な緊急事態宣言中である場合にはこの限りではありません。
例えば、私が世話人を行っている方の場合、必要なサイン等があれば病院の許可を得て面会をさせてもらっています(もちろん体温検査や消毒はしっかりと行います)。
出来るだけ時間を短く、本当に必要な最低限のことを行うだけであれば病院や施設は面会を認めやすいと思います。
それでも病院や施設の権限は絶対
それでも病院や施設の指示には必ず従わなければなりません。
無断で建物に入り、面会の必要性を訴えたりすることは避けましょう。
各施設でのコロナ感染防止対策はその中にいる全ての者のために行っているのですから、個人の理由は優先できません。
遺産分割協議書への署名押印の必要性
しかし病院や施設の担当者の中には遺産分割協議書への署名押印の重要性を理解していない方もいるかもしれません。
「コロナが無くなったらにしてください」
と言われる場合もあるでしょう。
しかし相続人から遺産分割協議書への署名押印をもらえないと相続手続きが行なえません。
しばらく財産の移転を行わなくても構わないという方はいらっしゃるかと思いますが、相続税の申告対象となる場合は相続開始から10ヶ月という期限があります(それでもコロナによる申告期限延長措置はありますが)。
そういった点をしっかりと説明し、遺産分割協議書の必要性を理解してもらうのも良いでしょう。
認知症の方である場合は出来るだけ早く遺産分割協議書に署名押印をもらいたい!
しかし、認知症の方であれば、問題が大きくなる可能性があります。
相続税の申告や財産の移転手続きが遅れるということよりももっと重大な問題が発生する場合があるのです。
例えば、物忘れなどの軽度の認知症はあるが、コミュニケーションには全く問題がなく、遺産分割協議も行える程度の方が入院していたとしましょう。
コロナが収束するまで面会は控え、1年後にようやく本人に面会できたとします。
その時、おそらく認知症状が悪化している可能性があるでしょう。
進行性の強い認知症である場合、時の経過とともに症状が悪化していくことが一般的です。
そして、面会を控えていたのですから家族と話をしていません。
そうなると急激に認知症が進んでおり、もはや遺産分割協議について理解できない状況となっていることも考えられるのです。
そのため、認知症のある方や進行性の強い精神障害のある方が入院や入所をしている場合は、施設に理解を求めて出来るだけ早く遺産分割協議書に署名押印をもらうことが必要となってくるでしょう。
真摯に必要性を訴えて病院や施設の理解を求める
ということで、コロナ禍の状況において入院や入所をしている方から遺産分割協議書への署名押印を求めるのはなかなか大変であると言えます。
しかし、相続は重要な手続きであり、時間的制約もあります。ましてや時間をおいたために本来できていた手続きが成年後見人無しでは行えなくなってしまったという状況になってしまうと最悪です。
後でも良いのか、それとも早く進めたほうが良いのかをしっかり考え、病院や施設に必要性を理解してもらった上で面会を行わせてもらいましょう。