最重度の知的障害者でも成年後見人無しで相続手続きができることがある!

成年後見人をつけない相続

最重度知的障害者には成年後見人をつけないと相続手続きができない?→✕

最重度の知的障害者とは、都道府県によって呼び名は違いますが、みどりの手帳や療育手帳で最も上の等級の判定がされた者です。

そのような者が相続人に含まれていた場合、相続手続きは行えるのでしょうか。

ほとんどの相続の専門家が「絶対にできない」と答えると思います。相続手続きを行うには「意思能力」を要するからです。

しかし私は一概にそうだとは思えません。なぜなら前例としての経験があるからです。

今回は、最重度知的障害者でも相続手続きが行えるケースがあるということについてお伝えしたいと思います。

最重度知的障害者でも相続手続きができる例

今回例示するのは、私が実際に関わりのあったAさんについてです。

Aさんはその都道府県の療育手帳では最重度となる「マルA」という判定でした

しかしAさんは、民間企業で働いています。障害者雇用枠で採用されていましたが、週5日の勤務をこなしていました。

通勤も電車とバスを利用して遅刻もせずに出勤しています

なぜ具体的に説明できるかというと、当時私はAさんの上司という立場だったのです。

Aさんは当該職に就く前は就労継続支援B型施設に通っており、その施設と当該職場のマッチングにより、就職が決まりました。

Aさんは失語症がありましたが、言葉を完全に理解しゆっくりではありますが、仕事に関しての会話に齟齬は生じませんでした。また時には冗談を言って他の職員を笑わせることもありました。

Aさんは携帯電話を所持し、通話やショートメールも行えます。公共の交通機関に遅延があった時も必ず勤務開始前に連絡をしてくれました。

またAさんは業務でワードやエクセルを使い、簡単な文書等も作成することができました

ただし、Aさんは身体障害がありました。自力歩行はできるのですが、とてもゆっくりであり、勤務日はかなり早い時間に家を出ていました。

また障害の程度について親御さんにお話を聞かせてもらうと、身体障害も相まってマルAという最重度の判定がついたのではないかという情報をいただきました。

最重度の知的障害者だって十人十色

以上が私が過去に関わらせていただいたAさんについてのお話です。

私は仮にこのような方が相続人に含まれていても、成年後見人をつける必要は全く無いと思います。

なぜなら相続について理解する「意思能力」について全く問題が無いからです

もちろん成年後見等の申立を行うと「バイアス」がかかりますから、「保佐」や「補助」に該当する可能性はあります。

また、相続のためでなく、一人暮らしをするためにサポートを要するというのであればそれは別の話になります。

しかし、ただ最重度の知的障害者だからといって必ず成年後見人を要する訳では無いというのが分かっていただけたのではないでしょうか。

Aさんには失語症を含めた身体障害がありますが、これは直接意思能力には関係ありません。言葉がゆっくりであろうと、事の理解度には影響を及ぼさないはずだからです。

世の中には最重度の知的障害判定を受けている方はたくさんいらっしゃいます。しかしそれだけで成年後見人の要否を判断するのは大変危険なことです。

そのため当事務所では、相続人に知的障害や精神障害があるからといっても、すぐに「成年後見人をつけなければ手続きはできませんよ」とは回答せず、個別に判断をしているというわけです。

成年後見申立の「バイアス」に注意!

先程少し触れましたが、成年後見の申立には「バイアス」がかかります。

「バイアス」とは、人の思考や行動偏りが生じることですが、これにより申立の結果に何らかの影響を及ぼしていると考えています。

それについては別の機会にまた触れてみたいとは思いますが、成年後見の申立を行うと「後見相当」には該当せずとも「保佐相当」や「補助相当」に該当する可能性はかなり高くなります

それは最高裁判所事務総局家庭局が発表している令和4年の「成年後見事件の概況」にも表れており、申立件数に対する「認容(後見・保佐・補助いずれかに該当と認められる)」の割合が95.4%ということにも現れています

そのため銀行等の機関から進められるがまま成年後見の申立を行ってしまい、後から後悔してしまうという人達が増えてしまっているのではないでしょうか。

相続手続きに成年後見人が必要か否かは個別に判断を!

ということで、今回は最重度の知的障害者が相続手続きに加われるか否かについてのお話をしました。

相続の専門家や銀行の職員等では、今回挙げたようなことを知っている者は皆無と言えるでしょう。もちろん福祉についての知識や経験が無いのだから当然です。

また、生活を送っていく上で成年後見人等を要することと、相続手続きで成年後見人等を要するのかということは別の問題であり、またそこに必要とされる意思能力も全く同じというわけではありません。

相続手続きで成年後見人をつけようとお考えの方は、その点をもう一度検討する必要があるかと思います。

当事務所では、障害のある方や認知症のある方が相続を専門に取り扱っておりますので、お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

成年後見制度を利用する前にぜひ一度ご相談を!新たな方法をご提案できるかもしれません!
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