成年後見人をつけたくないと考えてしまうポイントとその対策について解説します!

福祉サービスについての計画説明 成年後見人をつけない相続

※この記事は「専門家等の第三者による成年後見人」がついた場合を想定しています。

成年後見人をつけたくないと考える方は非常に多い

意思能力や判断能力が無い方には成年後見人の選任が必要となります。

例えば、福祉サービスの契約や遺産分割協議を行う際に、自分自身で契約の内容を理解できない方などは、成年後見人等が本人の代わりに契約等を行う必要があるのです。

しかし、成年後見人をつけることはメリットだけではなく、デメリットも多々あります。そのため、できるだけ成年後見人をつけたくないと考えている方が非常に多いのが現状です。

今回は、成年後見人をつけたくないというご本人やそのご家族が、なぜそう考えてしまうのかというポイントと、取れる対策について解説したいと思います。

成年後見人をつけたくないと考えてしまう主な理由とその対策

成年後見人をつけたくないと思っている方が、そう思ってしまう主な理由は「成年後見制度にかかる費用が大きい」ということと、「家族と本人とのつながりが阻害されてしまう」ということだと思います。以下に、それらの理由についての問題点と対策について解説します。

成年後見制度を利用するためにはお金がかかる

成年後見制度を利用するためにはたくさんの費用がかかります。

成年後見制度を利用するための主な費用は以下の通りです。

  1. 成年後見人申立費用(〜10万円)
  2. 申立手続委任報酬(5万円〜)※必要な場合
  3. 成年後見人への毎月の報酬(月2万円〜5万円)
  4. 成年後見監督人への毎月の報酬(月1万円〜3万円)※必要な場合
  5. 成年後見人の特別な費用

成年後見人申立に関係する費用としての相場は15万円〜30万円、成年後見人や成年後見監督人にかかる毎月の費用の相場は月2万円〜7万円程度です。

費用については、ケースによって大きなばらつきがありますので、財産の多少や家族後見人の採用などの要素によって費用負担の面で厳しいと感じる方とあまりそう思わない方がいるかもしれません。

成年後見人にかかる費用は若いほど多い!【1000万円以上の差がでることも】
成年後見人にかかる費用は若ければ若いほどかかる 意思能力や判断能力が無い方には成年後見人が必要となることがありますが、成年後見人には当然報酬を支払う必要があります。 成年後見人をつけることでかかる費用は「成年後見人選任の申し立てにかかる費用
成年後見人にかかる莫大な費用

成年後見人にかかる費用については、以下の考え方を基準とすると良いでしょう。

成年後見人の費用についての考え方

成年後見人にかかる費用が高いのか安いのか、必要なのか必要ではないのかを考える基準としては、以下の考え方をしてみると良いでしょう。

成年後見人にかかる費用(初期費用+毎月の費用)>本人の代わりに家族が行うことの負担

上記の考え方であれば、成年後見人を頼まないで家族がその代わりに本人に関する事務を行えるのであれば、成年後見制度の利用は不要であるということであり、これはほとんどの家族が行っていることです。

認知症の方であれ、知的障害や精神障害をお持ちの方であれ、基本的には本人に関する事務は本人の家族が行うことが一般的です。

私が何を言いたいのかと言うと、今まで本人の世話を家族が行っていた場合、今後もそれが継続でき、家族が過度な負担と思わないのであれば、成年後見制度の利用は必要ありません

障害者のいる家族の円満な相続

成年後見制度を利用しないのであれば、成年後見人にかかる費用は0円です。その費用がかからないのであれば、その分本人のために使うこともできるのです。

家族が本人を世話をすることができない

これは、本来本人の世話をしてもらうために成年後見制度があるところ、成年後見制度を利用すると逆に家族が本人の世話をすることができなくなるという制度上の矛盾点です。

ざっくりと「本人の世話」と言いましたが、正確には「財産管理」と「身上監護」です。本人の財産管理権と身上監護権は成年後見人にありますので、逆に言うと家族から財産管理に関する権利と身上監護に関する権利は剥奪されます。

この2つの権利について、多くの方が成年後見人をつけたくないと考えてしまう点とその対策について解説します。

財産管理

成年後見人がつくと、本人の預金通帳は成年後見人のもとへ渡ります。そのため、家族が本人の年金やその他の貯金について手を出すことはできなくなります

本人の口座から家族が出金する

本人の生活に関する小さな支出については家族が行うことも可能になる場合がありますが、例えば旅行など本人の生活に必須でなく、比較的大きな支出となるものについては簡単に本人の財産を使用することはできません。

そうなると、「家族が全額負担する」「成年後見人に伺いを立てる」しかありません。家族が全額負担する場合や成年後見人に伺いを立てる場合も、両方とも家族によっては面倒に思ってしまうことでしょう。

厳密な財産管理により本人の預貯金が管理されるため、成年後見人をつけると本人の財産の減少を防ぐことができるかもしれません。しかし、その保護された財産は本人が亡くなって相続されるまでは事実上凍結されたままとなりますので活用することはできませんし、相続人がいなければ最終的に国庫に帰属してしまうこととなります。

成年後見人が本人の財産の残額などについて家族に報告する義務はありませんから、例えば知的障害のある子の親は、自分が亡くなるまで子の財産がどうなっているかを二度と見ることができなくなってしまうこともあります。そのため、家族は「本人の財産が奪われてしまうのなら成年後見人はつけたくない」と感じてしまうのでしょう。

身上監護

財産管理の他には身上監護として、本人の福祉サービスの利用に関する事務などが挙げられます。

成年後見人は本人の身上監護に関する決定権を持ちますから、家族の意見を聞く義務はありません。身上監護に関する権利が家族から剥奪されるということは、例えば本人に対する「福祉サービス計画等」についての決定権を奪われることにもなります。

福祉サービスについての計画説明

本人を産み、本人を育ててきた親が本人の福祉サービスの方針について口を出すことができず、本人のことをほとんど知らない成年後見人が決定権を持ってしまうといった状況は明らかに不条理であると言えますが、それが成年後見制度を福祉的観点から見た時の急所と言えます。

そのため、「家族が本人の面倒をみられなくなるなら成年後見人はつけたくない」と考えてしまうのです。

成年後見人をつけたくないと思っているならできるだけつけない方法を考える

成年後見人をつけたくないと考えているのであれば、できるだけ成年後見人をつけない方法を考えることが必要です。

とは言っても、必ず成年後見人が必要となる場合も出てきますので、「成年後見人をつけるタイミングをできるだけ遅らせる」と考えたほうが良いかもしれません。

相続手続で成年後見人をつけないようにする

代表的な例としては、「相続」のタイミングで成年後見人をつけずに手続きをするといった方法です。

この点で失敗したと思ってしまう家族が非常に多いため、慎重に対応する必要があります。

若年者に成年後見人をつけるのは注意!

特に後悔してしまう家族が多いのが、認知症高齢者に対する場合よりも、若年の知的障害者や精神障害者に対する場合です。

知的障害者の少年

なぜなら、「成年後見人がついている期間が長いこと」「親が先に亡くなってしまう」といった理由があるからです。

父が亡くなり、母一人子一人となった場合、成年後見人がついていると、母が亡くなるまで子の財産は活用できません。母の目線で考えれば、「一生子の面倒がみられなくなる」と感じてしまうかもしれません。

もちろん、成年後見人によっては家庭のつながりを重視し、意見を聞いてくれる場合もありますが、運が悪ければ杓子定規に成年後見人の事務を遂行されるだけとなってしまう場合もあります。

後者の場合、親にとっては地獄です。本人のことを一番理解し、一番愛している自分が他人に子に関する事を決められてしまう。成年後見人をつけたことを後悔している方が一番多いのがこういったケースの場合です。

成年後見人をつけてしまうと財産の移転が自由にできない!

成年後見人をつけて相続(遺産分割協議)を行った場合、財産の移転割合を調整することはできません。成年後見人は本人の法定相続分を確保しなければならないからです。

いくら本人に財産を残す必要が無い場合でも、成年後見人は本人の法定相続分は確保しなければなりません。

最悪の状況を言ってしまうと、たくさんの財産がある家庭であるはずなのに、自由に使えるお金が無いということもありえるのです。

例えば親二人が亡くなり、兄と弟の二人が相続人になった場合、法定相続分は二分の一ずつです。弟に成年後見人がついた場合、弟が財産の活用ができない場合であっても遺産の半分は弟に渡す必要があります。

弟が障害年金一級を受給し、生活費があまり必要でない場合でも莫大な財産が弟の所有となってしまうことになるのです。

そして一度弟の名義になってしまえば、弟が亡くなるまではその財産は実質眠らせておくこととなります。

多額の預貯金を眠らせておく

兄がその分を所有できれば、弟の自己実現のためにその財産を使うことができるかもしれません。弟が旅行が好きであればたくさん旅行に連れて行ってあげることもできますし、スポーツカーが好きであれば好きな車を購入して乗せてあげることもできるかもしれないのです。

成年後見人は本人の自己実現のためであっても過剰な支出は認めません。よしんば成年後見人が認めたくても家庭裁判所が認めてくれはしないでしょう。

そういったデメリットを知っているため、成年後見人をつけたくないと考える方も多いでしょう。

相続のためだけに成年後見人をつけたくない方への対策ポイント

相続のためだけに成年後見人をつけたくないとお考えの方が取れる手段としては、「成年後見人をつけない相続手段」を考えることです。

とは言っても、成年後見人をつけない相続手続きを行える専門家は多くはいません。むしろほぼいないと言っても良いでしょう。

成年後見人をつけない相続手続に対応できるかどうかは事前に問い合わせる必要があるため、ご家族にとっては大変な労力となってしまいます。当事務所では全国対応で手続きを行っていますのでぜひ一度ご相談ください。

福祉サービスの継続のために成年後見人をつけたくないと考える方への対策ポイント

意思能力や判断能力が無い者が契約行為を行うことはできません。

福祉サービスの利用契約も立派な契約行為であるため、本人が成人であれば、成年後見人等が必要となってしまいます。

しかしそのためだけに成年後見人をつけたくないと考えているご家族も多いでしょう。

実は障害者福祉界の現状では、「家族が本人名で利用契約を行うことが可能」であることが多いです。例えば親が子の名前を署名して契約行為を行うことが可能なのです。

そのため、福祉サービスの契約のためだけに成年後見人をつける必要は少ないといって良いでしょう。

成年後見人を立てずに生活が送れるかどうかは福祉施設の判断次第?
利用している福祉施設の対応次第で成年後見人を立てずに生活を送っていくことができる訳 成年後見人を立てずに相続手続が行えた場合、次に大きなハードルとなってくるのが「福祉サービスの契約」です。 実はこの問題は非常に重要で、福祉施設によって対応が

しかし、親が子の名で福祉サービスの利用契約を行うことはほとんどの施設で運用上認められていますが、「兄弟」、「兄弟の配偶者」、「叔父叔母」、「甥姪」などが本人に代わって契約が行えるかどうかは何とも言えません。

施設によって取り扱いは違うでしょうし、「本人とのつながり」によって判断するところもあると思います。どちらにせよ施設が認めてくれなければ成年後見人等を本人につけなくてはならなくなります。

成年後見人等を無くして契約を行える者の判断基準としては、例えば「同居しているか」、「近所に住んでいるか」、「今まで本人に関わってきたのか」などは重要な要素と言えるでしょう。

兄弟等が本人の世話ができるのにも関わらず成年後見人をつけなければならないこととなってしまえば、家族としては大変痛手となるでしょう。成年後見人をつけたくないと思っている方は、上記に挙げた点があるかどうかを検討してみましょう。

また、上記の要素が無い状態であれば、それを作ってしまうことを考えても良いでしょう。

例えば、「本人と同居する」、「本人の近所に住む」などです。これらの状況を作ってしまい、本人との関係性が良好なことを説明することで成年後見人をつけずに福祉サービスの利用継続ができることもあるかと思いますので一考の価値はあるでしょう。

家族が近所に住む

※あくまでも判断は福祉サービス機関によりますので、確実な手段というものはありません。

成年後見人をつけたくない方には取れる手段がたくさんある!

以上、成年後見人をつけたくないと思ってしまうポイントとその対策についての解説をしましたが、成年後見人をつけたくないと思っている方には取れる手段が多くあると思います。

本来成年後見制度は、家族が本人をみることができない状況に陥った時に活躍する制度だと思っております。そのため、然るべき時が来るまではできるだけ成年後見人をつけないのが得策と言えるでしょう。

当事務所では、成年後見人をどうしてもつけたくないとお考えのご本人とそのご家族のサポートをしておりますので、どうぞご利用ください。

成年後見制度を利用する前にぜひ一度ご相談を!新たな方法をご提案できるかもしれません!
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