知的障害者の相続のポイント6つ【障害の程度・署名・施設・家族の理解・障害者控除・印鑑証明】

成年後見人をつけない相続

知的障害者の相続のポイントは5つ!各ポイントについて解説します!

知的障害者の方が相続人に含まれる相続手続きにはいくつかのポイントがあります。

その中で一番のポイントは成年後見人をつけるか否かだと思います。

今回は成年後見人をつけるか否かに関することを中心に知的障害者の相続のポイントを解説したいと思います。

成年後見人をつけない相続は可能!【知的障害・認知症・精神障害でも諦めない】
知的障害者や精神障害者の方が相続人に含まれる場合に、必ず成年後見人をつけなければいけないのかというとそうではありません。ここでは、成年後見人をつけない相続を行うことが可能であるということと、どういった点に注意しなければならないのかを解説します。

知的障害の程度

まず最も重要なポイントは「知的障害がどの程度の症状なのか」ということです。

知的障害があっても遺産分割協議を行える程度の意思能力がある方はたくさんいらっしゃいます。

特に軽度〜中度」の知的障害の場合は充分に遺産分割協議ができるという方が多いでしょう。

知的障害者の少年

知的障害については個性が強く、一概に中度の知的障害だからと言っても遺産分割協議ができるか否かは人それぞれです。

その程度について判別するのは家族と言えどもなかなか難しいものがあるでしょう。

知的障害者が署名を行えるか

本人が署名を行えるかという点は相続手続きの実務上で一番大きなポイントとなります

なぜなら、いくら遺産分割協議の内容を理解することができても遺産分割協議書に署名が行えなければ有効な遺産分割協議書が作れないからです。

原則的に有効な遺産分割協議書がなければ相続手続きは進みません。すなわち相続手続きができないということです。そうなると「意思能力があっても成年後見人をつけなければ相続手続きを行うことができない」といった困った状況になります。

自分の名前が漢字で正確に書けるかということについても個人差が大きいため、昔から自分の名前を書く練習をしていたかなども大きく影響します。まずは実際に自分の名前が書けるかを試してもらいましょう。

簡単にできる最低限かつ最強の障害者相続対策は【自分の名前を書く練習】!?
誰でも準備出来るがやっておかないと困る障害者相続の対策は?親なきあと問題という言葉が多く聞かれるようになっていますが、その親なきあと問題に含まれる大きな問題の一つが「障害者の相続」です。ここでの障害者の相続とは、「相続人に障害者が含まれる場...

施設入所の有無

グループホームなどの施設に入所されている知的障害者の方は多くいらっしゃいます。

その中で、週末に自宅へ帰ることなく基本的にずっと入所している方もいます。

施設にもよるでしょうが、施設内で遺産分割協議を行うことや遺産分割協議書に署名押印してもらうことを快く行わせてくれない所もあると思います。

その場合は一時外出などを行うなどして遺産分割協議書に署名押印をしてもらうことになるでしょう。その際は本人が最も落ち着ける自宅等で行うと良いでしょう。

家族の理解

家族間で本人に成年後見人をつけるか否かで揉めることはよくあります。そのため家族の共通理解も大きなポイントとなります。

家族全員で「成年後見人をつけないで相続手続きを行える」といった認識を持てない場合は後々トラブルとなる可能性が出てきます。

なぜなら、家族の誰でも本人に対して成年後見人の申立を行うことができるからです。

一旦は成年後見人をつけずに相続手続きを終え、全ての財産を各相続人に分配したとしましょう。しかし、後日誰かが「あの遺産分割協議は無効だった。成年後見人をつけてもう一回遺産分割協議をやり直そう。」と言い出した場合、法的には誰も止めることができないのです。

そうなると今まで行った手続きは全て無駄になってしまいます。成年後見人をつけて相続をやり直すこと=法定相続分での分配となってしまうことも大きなポイントと言えるでしょう。

家族(法定相続人)全員が共通の理解を持って相続手続きを行うということが重要です。

障害者控除の適用

相続財産が基礎控除額【3000万円+法定相続人の数×600万円】を超える場合は注意が必要です。

障害者控除を受けられる相続とは

相続税に関する強力な控除である「障害者控除」は障害者の相続分が0の場合は適用することができないからです。

知的障害者等の相続分を0にする方法【障害者控除を使わない場合に取れる手段】
知的障害者の相続分を0にすることは可能です。しかし、相続税の障害者控除という制度を利用する場合には大きな損失となる可能性があります。ここでは、障害者控除をつかわない場合にとれる手段として、本人を保護するために相続分を0にする方法を解説します。

遺産分割協議の内容は相続人の間で自由に決めることができます。そのため、「知的障害者の方に相続分を全く渡さない」といった内容の遺産分割協議もよく行われているのです。

障害者控除は障害者本人だけでなく、控除の上限に達しなかった場合は他の相続人が余った枠を利用することができます。また障害者控除は、「計算上障害者控除を用いた後に基礎控除額内に収まった場合は相続税の申告義務も無くなる」という非常に使い勝手の良い制度であるため、この制度を使えるか使えないかで数百万円の差が出てくることもしばしばあります。

まずは遺産総額を割り出して障害者控除を適用するかしないかを判断し、知的障害者の方の相続分を調整するといった方法も検討してみましょう。

相続税の障害者控除を受けるために財産を分ける場合は現金が良い?
相続税の障害者控除は非常に強力な制度であり、その活用は必須と言えるでしょう。しかし、障害者控除を受けるためには対象となる障害者への相続分を0にしてはなりません。ここでは、障害者控除を受けるためには現金が良いという理由について解説しています。

印鑑証明書を作っているか

実は盲点となるのはこのポイントです。

すでに印鑑証明書を作っているか(実印登録をしているか)で明暗が別れる場合もあります。

なぜなら、相続手続きには実印を証明する印鑑証明書が必要だからです

この印鑑証明書をまだ作っていない場合、困難を極めることがあります。

意思能力が無いという理由で市役所が印鑑証明書を作らせてくれないことがあるためです

印鑑登録という行為には当然本人の意志が必要となります。それを市役所で確認するのですが、その際に意志が確認できないと言われてしまうと大変困ったことになってしまいます。

もちろん「代理人による印鑑登録」という方法もあるのですが、その場合に本人に電話確認をするという自治体も多くなってきているため、結局は本人の意志が確認できないために代理申請もできなかったというケースがあるのです。

知的障害・精神障害の方の印鑑証明書は作れるのか?【電話確認が必要な場合あり】
意思能力の有無が疑われる者や入院等で本人が直接印鑑登録手続きを行えない場合も印鑑登録は認められるのか?相続手続き等には「印鑑証明書」が必要となります。印鑑証明書とは、自分の印鑑を正式な物(実印)として証明するためのものですが、そのためには「...

知的障害者の相続のポイントはたくさんある!

以上、知的障害者が相続人に含まれている場合の相続手続きのポイントについて解説しました。

知的障害者の方が相続人に含まれる場合は一般的な相続とは考えなければいけないことが全く違います。

一番安全なのは他のご家族が遺言を作成しておくことです。遺言があれば相続の際に成年後見人をつけないで良い可能性が大きく上がります。ただし遺言の内容によっては全く意味のないものになってしまうことがあるので慎重に作成しましょう。

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当事務所では知的障害者の相続や遺言の作成について専門的に取り扱っておりますので、お困りの方はぜひ一度ご相談ください。

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