「遺言書を作るのに公証役場の手数料や専門家への報酬で数十万円もかけるのは勿体ない」 そう考えて、遺言の作成を後回しにされている方は少なくありません。
しかし、障害のあるお子さんや認知症のご家族がいるご家庭において、この「数十万円の費用」を惜しんで遺言を作らないでおくと、将来的に数千万円単位の大損を引き起こす危険性が極めて高くなります。
逆に言えば、数十万円の費用をかけて正しく遺言を作成しておくだけで、相続時に数千万円以上の損失を防ぎ、実質的に「費用に対して100倍以上の得(価値)」を生み出すことができるとも言えます。
なぜ遺言を作るだけでそれほどの金額差が生まれるのか、その具体的な「2つの得をするポイント」と事例を挙げて詳しく解説します。

得をするポイント①:「成年後見人費用」を丸ごと回避できる可能性がある
遺言を作成しておく経済的メリットのひとつは、将来発生する可能性が高い「成年後見人の費用」を完全にゼロにできる可能性があるということです。
遺言が無いとどうなるか?
意思能力(判断能力)の不十分な障害のある子や認知症の家族がいる状態で親が亡くなると、銀行での預金解約や名義変更を行うために、家庭裁判所に申し立てて「成年後見人」をつけざるを得なくなります。
成年後見人が選任されると、毎月の後見人報酬(月額2万〜5万円程度)が発生します。仮にお子さんが若く、その後30年〜40年生活が続いた場合、累計で1,000万円以上もの後見人報酬が本人の口座から引き落とされ続けることになります。
遺言があればどうなるか?
親が元気なうちに「遺言」を作成し、信頼できる健常な兄弟姉妹などを「遺言執行者」として指定しておけば、親が亡くなった際の相続手続きは遺言執行者が代表してすべて行うことができます。
自筆証書遺言というものもありますが、無効となるリスクが極力低い「公正証書遺言」を作成することで安心感はさらに増します。

銀行窓口で成年後見人を立てるよう要求されることなくスムーズに解約や名義変更が完了するため、将来発生するはずだった1000万円レベルの後見人報酬を払わずに済む可能性があります。
得をするポイント②:法定相続分に縛られず、資産の凍結や「国庫没収」を防げる
遺言が無い場合、相続財産は法律で定められた「法定相続分」に従って分けるか、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。しかし、これがご家庭の資産を凍結させる引き金になります。
遺言が無いとどうなるか?
法定相続分に従って、意思能力のない障害のある子に実家の不動産持分や多額の預金を相続させてしまうと、実質的には不動産も預金も凍結状態になってしまう可能性があります。
- 不動産:売却も賃貸も行えず、処分できずに固定資産税だけがかかる「塩漬け物件」になる。
- 多額の預金:本人が使い切れずに残ったお金は、本人が亡くなった際に相続人がいなければ、最終的にすべて「国庫に帰属」されてしまう。
我が子を想って残した数千万円の資産が、家族のために使えないまま国に回収されてしまうのは、あまりにも大きな損失です。
遺言があればどうなるか?
適正な内容の遺言を作成しておけば、法定相続分にとらわれず、ご家庭の実情に合わせた「自由な財産配分」が可能になります。
- 不動産や大半の預金:管理や活用ができる健常な兄弟姉妹へ単独で相続させる。
- 障害のある子:安全に「障害者控除」を適用させるために財産の一部のみを相続させ、生活のサポートは健常なきょうだいに委任する。
この配分にしておくことで、不動産をいつでも適正価格で売却して活用でき、家族の財産が国に没収されるリスクも完全に防ぐことができます。

【事例比較】遺言の有無で「約4,000万円」の差が出たAさんのご家族のケース
実際にあったご家庭の条件をモデルに、「遺言を作らなかった場合」と「遺言を作った場合」でどれほどの差が出るかを比較してみましょう。
- ご家族構成:父親(死亡)、母親(すでに死亡していた)、長男(健常・35歳)、次男(重度知的障害・30歳)
- 相続財産:自宅不動産(評価額2,000万円)+ 預金4,000万円= 合計6,000万円
【ケース A:遺言を作らなかった場合】
1. 次男(障害のある子)と長男で遺産分割を行うため、成年後見人の選任が必須となる。
2. 次男に法定相続分(1/2=3,000万円相当)を配分。
3. 成年後見人報酬:月3万円 × 12ヶ月 × 40年(次男が70歳まで生存)= 約1,440万円の費用発生。
4. 自宅不動産が共有名義となり、将来長男が売却・活用できなくなる。
5. 長男に子がいなかったため、次男が使い切れなかった資産は、将来次男の死亡時にすべて「国庫へ帰属」。
⇒ 経済的損失・費用:約4,000万円(実質的に凍結状態になる財産を含みます)
【ケース B:数十万円で公正証書遺言を作成していた場合】
1. 遺言作成費用:公証人手数料+行政書士報酬 = 約40万円。
2. 遺言内容:「長男に不動産および多くの預金を相続させる。次男には一部の財産を相続させる。長男は次男の生活を身上保護・金銭面でサポートすること。遺言執行者に長男を指定する。」
3. 遺言執行者である長男が単独で口座解約と不動産名義変更を完了。成年後見人は不要(費用0円)。
4. 長男は不動産を自由に活用でき、次男の生活費も長男の手元資金から柔軟に捻出。次男死亡時に使いきれなかったお金は長男または長男の子に相続できる。
⇒ 遺言作成コスト40万円で、後見人費用をカット+不動産と資産を防衛!
ケースAとケースBを比較すると、最初にたった40万円の費用をかけて遺言を作成したことで、必要のなかった費用をカットし、父親の財産を有効に活用できるようになりました。
まさに、「かかった費用の100倍以上の得(価値)」を生み出せる可能性があると言えます。

まとめ:元気な「今」しか作れない最高の投資
「遺言書を作成する」ということは、単なる書類の手続きではありません。 数十万円の費用で、将来発生する不必要な支出をカットし、大切な家族の資産と自由を守り抜く「最も効果的な投資」なのです。
ただし、注意が必要なのは、「障害者相続や認知症対策のノウハウを持たない専門家に頼むと、間違った配分(障害のある子に多額相続・不動産共有など)をされてしまい、結局遺言が無効化・凍結してしまう」という点です。

しっかりと数千万円の得を生み出すためには、障害者相続・親なきあと対策を専門とする行政書士などのプロに相談し、「成年後見人をつけない、失敗しない遺言書」を作成することが不可欠です。
親御さんが健康で判断能力がある「今」こそが、遺言を作成できる唯一のタイミングです。大切なご家族の将来と資産を守るために、ぜひ今すぐ専門家へのご相談をご検討ください。


