こどもNISAが成年後見人の引き金に!それでも非課税枠を活用したい場合の3つの条件とは?

成年後見人をつけない財産管理

障害のあるお子様を持つ親御さんにとって、「自分たちが亡くなった後(親なきあと)、この子が一生お金に困らないように少しでも財産を残してあげたい」と願うのはごく自然な親心です。昨今では少額投資非課税制度(NISA)や、未成年者を対象とした資産形成制度(こどもNISA/ジュニアNISA)が広く普及したことで、「子ども名義の口座で株式や投資信託を運用し、将来のために資産を増やしてあげよう」と考えるご家庭も少なくありません。

しかし、障害(特に知的障害や精神障害など)のあるお子さんの場合、この「良かれと思った資産形成」が将来大きな裏目に出てしまい、結果として金融機関からの「口座凍結」や「成年後見人の強制的な選任」を引き起こす最大の引き金になってしまう現実があります。しかも制度開始から日が経っていないため、これらのリスクを説明してくれる金融機関は皆無だと言えます。

本記事では、障害者・認知症の相続および親なきあと対策を専門とする行政書士の視点から、まだ誰も考えていない「こどもNISAの運用に潜む構造的なリスク」、親なきあとに向けた「正しい財産の残し方」、そしてもしこどもNISAを活用したい場合の「3つの絶対条件」について詳しく解説します。


第1章:なぜ「こどもNISA」が成年後見人の引き金になるのか?

18歳(成人)で直面する「親権の消滅」と手続きの壁

未成年の間は、親が「親権者(法定代理人)」として、子どもの代わりに銀行や証券会社の口座を開設し、解約や出金などの手続きを行うことができます。

しかし、民法改正によって成人年齢が18歳に引き下げられた現在、子どもが18歳(成人)に達した瞬間、法律上親権は完全に消滅します。これにより、たとえ親であっても「子どもの代理人」として勝手に金融機関の口座を操作したり解約したりする権限は一切失われることになります。

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はじめに:親の「良かれと思って」が、将来の口座凍結を招く障害のあるお子さんの将来を心配し、「自分が元気なうちに、少しでも多くのお金を残してあげたい」と考えるのは、親として当然の愛情です。その愛情から、お子さん名義の銀行口座を作り、コツコツと…

こどもNISAにおいても、親が子の口座を開設し、積立金額を設定できるため、スタートにおいては親の自由が利くのですが、後から大きな罠に気付くことになってしまうのです。

「本人の意思確認」ができず金融機関で口座が凍結される

子どもが18歳以上になると、こどもNISAの財産は自動的に一般NISAに移管されます。そうなると親の管理下から完全に離れてしまうため、NISA口座の解約や、預金の引き出しを行う際には、口座名義人である「本人自身の意思確認」が必須となります。

もしお子さんに重度の知的障害や精神障害があり、法律上の意思能力・判断能力が不十分である場合、証券会社や銀行の窓口で「本人の意図(解約や出金への同意)」を確認することができません。

その結果、金融機関は「本人の意思能力が確認できないため手続きはお受けできません。口座の解約や払出しを行うには、家庭裁判所で成年後見人を立ててきてください」と回答します。こうして、せっせと増やしたNISA口座内の資産は、引き出すことも解約することもできない「事実上の凍結状態」へと陥ってしまうのです。

成年後見制度がもたらす重いリスク(費用と自由の喪失)

口座が凍結されたからといって安易に成年後見人を申し立ててしまうと、家族にとって極めて重大な負担が発生します。

  1. 一度つくとなかなかやめられない:成年後見制度は一度利用を開始すると、なかなかやめられず、一生涯就くことも多くあります。
  2. 多額の後見報酬が発生する:弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任された場合、本人の財産額に応じた後見報酬(月額数万円〜、生涯で数千万円に及ぶこともある)を支払い続けなければなりません。
  3. 財産の自由な運用・使用が奪われる:成年後見人は「本人の財産保護」を第一の義務とするため、家族であってもそのお金を家族の誰かの生活費や家のリフォーム費用、家族の裁量で柔軟に使うことは一切認められなくなります。
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成年後見人にはデメリットが非常に多くあります。これらのデメリットを知らずに利用し、後で公開してしまう人はたくさんいらっしゃます。ここでは成年後見人のデメリットについてランキング方式で解説していきます。

親が「我が子の将来のため」に資産形成をしたはずが、そのお金が自由に使えないばかりか、成年後見人への報酬支払いのために消化されていくという、まさに「成年後見人に払うために貯金していた」という本末転倒な事態を招いてしまうのです。


第2章:親なきあと対策の鉄則――財産は「親の財産」として確保する

「障害のある子名義の資産」を作ってはいけない理由

親なきあと対策における財産管理の鉄則は、「障害のある子名義の資産(口座・貯金・投資商品)を作らない・貯めこまない」ということです。

親権がある未成年のうちに「子のために」と子名義の口座にお金を振り込んだり、こどもNISAで運用の枠を作ったりしても、子ども自身に管理・運用能力がない限り、将来その資産はすべて「動かせない凍結資産」になります。

さらに税務上の観点からも、親が自分の資金を出して判断能力の無い子名義の口座に貯めたお金は、税務署から「名義預金(実質的には親の財産)」と判定される可能性があります。その場合、親が亡くなった際には結局「親の相続財産」として持ち戻されて相続税の課税対象とされるため、節税対策としても全く意味を成しません。

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※こどもNISAにおいては、「贈与」と判断されるという見解が有力ですので、年間110万円までは贈与税を気にする必要はないでしょう。

正しい残し方:親名義で確保し、「遺言」で健常なきょうだい等に託す

では、親なきあとに備えてどのように財産を残すのが正解なのでしょうか。

正解は、「資産は親名義の口座・財産として確保しておき、親が元気なうちに『遺言書』を作成して健常なきょうだい等に託す」ことです。

具体的な手順は以下の通りです:

  1. 親名義で資産を管理する:親の意思でいつでも自由・柔軟に動かせる親名義の口座・資産として手元に保持します。
  2. 公正証書遺言を作成する:親に判断能力があるうちに、証拠力の高い「公正証書遺言」を作成します。
  3. 遺言執行者を指定してきょうだいに託す:遺言の中で必ず「遺言執行者(信頼できる健常な子など)」を指定した上で、「財産は健常な長男に多く相続させる。その代わり、障害のある次男の生涯の生活費やサポートのために活用してほしい」と託しておきます。

この手法をとることで、親の死後に障害のある子がトラブルの元となる「遺産分割協議」に関与する必要がなくなり、成年後見人を立てることなくスムーズに相続手続きを完了させることが可能になります。


第3章:それでも「こどもNISA」を使いたい場合の3つの条件

ここまでのリスクを理解した上で、「非課税枠を活用したい」「それでも子どものNISA制度を利用したい」と考える場合、少しでもリスクを低下させるための「3つの条件」が存在します。

もしこどもNISAを使いたいのだとしたら、以下の①〜③の条件で利用すれば成年後見人のリスクを下げられる可能性があります。

条件①:18歳を迎えるまでに解約すること(軽度の障害である場合に限る)

第一の条件は、「子どもが18歳(成人)を迎える前(=親権が存続している未成年のうち)に全額解約・出金・現金化を完了させること」です。

こどもNISAは原則解約ができません。下記のように12歳以上になるとNISA口座からの引き出しができるとされていますが、各証券会社等では未成年者の同意書の提出などの厳格な手続きが要求されています。

また18歳未満であれば災害や病気などのやむを得ない理由での口座全体の解約が認められていますが、こちらも厳格な手続きの要求が求められる可能性が高いでしょう。

こどもNISA解約の条件(非課税での払出が可能)

12歳以上になると本人の教育費や生活費に充てる場合に限り、本人の同意や確認書類の提出を条件に一部または全額の払い出しが可能

18歳未満であれば災害・病気などのやむを得ない場合に限り、口座の解約が可能。

※その他の場合はこれまで受け取った利益等に対し課税がされる

野村証券HPより引用

こどもNISA
野村證券のこどもNISA/少額投資非課税制度のページ。こどもNISAの制度概要やポイント、メリットやジュニアNISAとの違いを掲載しています。

となると、重度の障害があり、意思能力が完全にない子であると、解約の手続きは非常に困難になると予想されます。そのため、解約ができる可能性があるのは「比較的軽度の障害者」に限定されるでしょう。

こどもNISAは名義人の子が成人したあとは自動的に一般NISAに移行されます。成人の口座であればさらに解約手続きは困難になるため、それまでに対策を取ることが必要になります。

こどもNISAの開始は2027年1月からとなっていますが、こどもNISAの運用が開始された後も、実際の解約方法がどこまで厳格化されているのかはおそらく数年間はわからないと考えます。焦って手を出さずに、状況を見守っていきましょう。

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条件②:健常のお子様のみにすること

第二の条件は、「自身で契約や資産の管理・手続き・意思表示ができる健常なお子様に対してのみ利用すること」です。

契約内容や運用の意味を理解し、金融機関と自己の意志でコミュニケーションが取れる健常なお子様であれば、18歳になって親権が消滅し、一般NISAへ移行後であっても、本人自身の意思で金融機関と手続きを行い、解約や売却、他口座への送金を問題なく行うことができます。本人の判断能力に課題がなければ、銀行や証券会社から成年後見人を要求される心配もありません。

そのため障害のある子と健常の子がいる家庭においては、障害のある子ではなく、健常の子名義のNISA口座を作り、障害のある子の将来のために使ってもらうようにしましょう。

条件③:一人っ子であること

第三の条件は、「お子様が一人っ子であること」です。

他のきょうだいがおらず一人っ子である場合は、両親が亡くなった後に成年後見人をつけざるを得ないケースが多くなります。そのケースに該当する場合は、財産は成年後見人によって管理され、本人の財産が不足することになれば貯めておいたお金を支出してもらえます。しかし本人の財産が障害年金や流動的な預貯金などにより不足することがなければ、最終的に国庫に帰属されるため、過剰な貯蓄は避けた方が良いでしょう。

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第4章:まとめ――後悔しない「親なきあと対策」のために

障害のあるお子さんを持つご家庭において、「我が子の将来のため」という深い愛情から行った子名義の資産形成やこどもNISAの運用が、将来的に「お金が自由に使えない」「成年後見人がついて多額の費用が発生する」という悲しい結果を招いてしまうケースは後を絶ちません。そのため、今の段階では意思能力に支障があるお子様名義のこどもNISA口座は開設しないほうが安全と言えるでしょう。

障害のあるお子さんの安心な未来を守るための本務は、本人名義で口座にお金を貯めこむことではありません。「親の手元・親権の範囲でしっかり資産をコントロールし、元気なうちに遺言書等の正しい法的な備えを完了させておくこと」こそが、本当の親なきあと対策です。

「自分たちの家庭にはどのような備えが必要か」「具体的にどう遺言書を書けばよいか」とお悩みの際は、表面的なマネープランのアドバイスにとどまらず、障害者の相続実務や成年後見回避の知見を持った専門行政書士へお気軽にご相談ください。

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